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横殴りの雨が朝から降り続いていた。 その日はちょっと大きな仕事が入っていて、私とB型上司はひとつの仕事に没頭した。 オフィスの机に腰を下ろして向かい合うB型上司と私。お互い無言だったのは、疲れていたせいではなかっただろう。先に口を開いたのは私だった。 彼は黙って立ち上がると私の手をつかんで椅子から立たせた。 会社から程近い、ダイニングバーで、私たちは向き合った。ビールを一杯ずつ飲み干すと、ウイスキーをロックで頼んだ。 『好きだ』 予感はあった。早く、決着を付けたくてここへ来たのだ。 それなのに、いざとなると、言葉が出てこない。苦しい。 彼は笑った。 ふいに泣きそうになる。 『ばか・・・泣くなよ・・・ごめん』 出会えてたら?もっと早く?そうしたら何かが違っていた? 『人生に「たら・れば」はないの。同じだよ。何も変わらない。きっと。』 淋しそうにうなずく彼。 『でも、俺と、おまえ、仕事上では本当にいい、パートナーだよな?それはそう思わない?本当はこの部署に回されて来て、嫌だったんだ。すぐにもとの部署に戻りたかった。でも、お前と出会って仕事して行くうちに、本当にこの仕事が面白くなってきて・・・。』 真っ直ぐに私を見て彼が言う。 『仕事では、これからも俺を助けてくれ。仕事上だけでいい。お前が必要なんだ。お前じゃなきゃダメだ。これからも、よろしく頼む。』 握手の手を差し出され、ちょっと戸惑いながらその手をにぎり返す。 送るという、彼の好意を断って土砂降りの中、ひとりタクシーを拾い、行き先を告げてため息をつく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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