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しかたのない蜜

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2008年09月18日
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テーマ:アニメ!!(3880)
カテゴリ:アニメ
 翌日。

 スザクは浮き立つ足取りで、カレンの元に向かった。
 きっといつものように、彼女は喜びいさんで自分を迎えてくれるのだろう。
 が、今日のカレンは明らかにいつもと違っていた。
 まず最初の頃のように牢屋に入れられている。
 そして、顔からはうち解けた笑顔が消え、代わりに凍り付いた表情が張り付いている。


 嫌な予感がして、スザクはカレンに歩み寄った。

 カレンが鋭く叫ぶ。

「こっちに来ないでっ! この卑怯者!」

「そ、そんな……」

 突然の事態に戸惑いつつも、スザクはカレンの牢獄に自分も入った。途端に、カレンの
平手打ちが飛ぶ。

 痛みを感じている暇はなかった。


「この卑劣漢! 妙な力で私を洗脳して、よくも、よくもあんなことを……」

「そんな、カレン、違うんだ!」

「いや! いや! 離して!」

 泣きながらカレンがおのれの腕から逃れようとする。
 昨日まで、あんなに自分を愛してくれていたカレンが。

 彼女を離したくない。

 その一心で、スザクはカレンを抱きすくめ、強引に押し入っていた。
 カレンの叫び声が単なる怒声から、やがて甘いうめきに変わっていく。
 彼女の体は、確実にスザクを覚えていたのだ。

 やがて、カレンは高みに達し、スザクの腕の中でのけぞった。

「あっ――!」

 強く抱きしめると、カレンは小さくつぶやいた。

「スザク……」

 その声が慈しみに満ちていると思うのは、スザクの気のせいだろうか。




 身繕いを終え、宮殿を出るとすでに夜はとっぷりと暮れていた。
 一人の少女がじっと自分を見つめているのに気づき、スザクは脚を止める。

「君はいったい何を企んで、こんなことをしたんだいアーニャ? いや……別の人」

 アーニャは優雅な仕草で肩をすくめる。

「最初考えた計画が失敗だったって分かったから、ギアスをキャンセルしてもらったの。このままじゃ、あなたあの子に勝てないわ――ルルーシュに」

 スザクの目がギラリと光る。

「ルルーシュっ? やっぱりゼロはルルーシュなんですかっ?」

「それを確かめるためには、カレンにこれを注射しなさい」

 そう言ってアーニャが差し出したものは注射器とアンプル――リフレインだった。



 翌日。

 リフレインを持ったスザクは、カレンのいる宮殿へと向かう。
 きっとそこには、憎悪に満ちた彼女がいるのだろう。
 魔法が解け、苦い現実に戻った姫君が。

 そしてスザクも、ゼロ――ルルーシュを追い詰めるという本来の目標に立ち返った。

 もう確信している。

 カレンは二度と、自分に心を許してくれない。

 あの甘やかな日々は、すべてギアスが見せたまやかしだったのだ。

 それでも、スザクはそれを忘れることができなかった。




 カレンのいる宮殿に脚を踏み入れ、リフレインを取り出した時でも。




                           第一章 fin





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最終更新日  2008年09月18日 00時26分56秒
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