タブッキの「旅そのほかの旅」より
朝晩は冷えるのだけれど、日中はかなり暑く、ローマの最高気温は27度とか。まだ海に行く人がいてもオカシクナイくらい。旅が好きだけれど、旅に出かけないときには、次回の旅を考えたり、旅についての本を読んだりするのが好きだ。今年春他界した、アントニオ タブッキの2010年出版された「旅そのほかの旅」を読み返している。原題「Viaggi e altri viaggi」Antonio Tabucchiこれは、残念ながらまだ日本語には翻訳されていないようだ。これは、彼が京都を訪れた際に、谷崎潤一郎のお墓を訪ねた話やら、彼の愛するポルトガルの話やら、世界のいろんな街とその国の小説家の話がでてきて、とても楽しい。冒頭に、こんなフレーズがあった。La letteratura-ha detto un poeta-è la dimostrazione chela vita non basta. Perchè la letteratura è una forma diconoscenza in più. è come il viaggio:è una forma di conoscenzain più, tante forme di conoscenza in più. Molte cose ci possono bastare, e devono bastare, nella vita:l'amore, il lavoro, i soldi.Ma la voglia di conoscere non basta mai, credo. Se uno ha voglia diconoscere, almeno.文学は、(ある詩人が言った)人生はこれで十分といえないことを証明するものだ。なぜなら、文学は、更なる認識のひとつの形だから。文学は、旅のようなものだ、つまり、旅は、更なる知識のひとつの形であり、更なる認識の多くの様態である。多くのことは、人生において、これで十分と言っていいだろうし、それで十分と言わなければならない、例えば、恋愛、仕事、お金については。だが、知りたいという願いは、足りるということは、ないと思う。少なくとも、人が、知りたいと思う限りは。気持ちの良い秋空を眺めながら、次の旅はいつ、どこになるかなとふっと考えている。