ちょっといい話
ヴィンチェンツオ チェラーミ氏が亡くなった。長い間病気を患っていたという。享年72歳。日本の方はご存じない方がほとんどだと思うが、オスカーを受賞したロベルト ベニーニの映画「ライフ イズ ビイウテイフル」の脚本家というとお分かりになるだろうか。ハリウッドで映画の脚本を研究した結果、彼の脚本はパーフェクトであったという。この脚本家(詩人であり、先生もしていたが)はシチリア生まれの両親のもとに、ローマ南にあるチアンピーノ(現在はローコストの空港があるところで、ベッドタウンでもある)に育った。中学校の時に、パソリーノ(イタリア戦後の映画監督,詩人、新聞記者、作家、俳優などとして知られるインテリで、若いときにオステイアで殺されて亡くなった)の教え子であった。それまで、彼はあまりにも空想がひどいので、学校の先生たちからは褒められたことがなく、落第したこともあったらしい。パソリーノ氏は、山での休暇というテーマの作文をクラスの生徒たちに書かせ、山に行ったこともなかったチェラーミ少年が書いたのは、ローマ北にあるテルミニッロのファンタジーあふれる話。作文が素晴らしい!とパソリーニ氏はクラスのみんなに読み上げ、チェラーミ少年を励ましたという。ここから彼の脚本家としての新たな人生がスタートすることになった。ここで思うのは、チエラーミ氏がそこでパソリーノ氏に出合ったのはものすごくラッキーなことであったということは間違いないのだけれど、(わたしも出合いたかった)人間、出会いで人生がぱっとバラ色になることがあるということと、好きなこと、得意なことを続けることの重要さ(それが大成功でなくても)。彼の映画を改めてじっくり観たいなと思っている。