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カテゴリ:本に読まれて
霧のむこうに住みたい (河出文庫) [ 須賀 敦子 ] 今回は母が第一の目的で一時帰国をしたため、友人にも ほとんど会わず仕舞いでもうイタリアに帰って来た。 須賀さんの本は私にとって心が安らぐ場所のひとつ。 母の所に送って貰っていた何冊かの本を大事にイタリアに 持ち帰り、大事に読んでいる。 この本はずっと前に出版されていたようだったが、未読 のようだったので今回ゆっくり読んでいる。 須賀さんの長いイタリア暮らしのお話が、詩のように 書かれていて情景を思い浮かべながら読む。 やはり時代が変わったので、例えばローマのナボナ広場の クリスマス市なんかはもうあまりなくなりつつというのが 寂しく、でも一頃はそうだったわ、と私も懐かしく思い出し ながら、また月日があっという間に経つのをしみじみ。 この本の中で、後書きに松山巌さんが書いているように 一番印象に残ったのが、ウンブリアのノルチャへの遠足の ことを書いた部分だった。 丘の上に作られた小屋のバールで出会った寡黙な羊飼いたちとの 出会いの後、丘の下で待っているバスに駆け戻りながら戻る途中、 須賀さんが感じたこと。 ・・細かい雨が吹き付ける峠をあとにして、私たちはもう いちど、バスにむかって山を駆け降りた。ふりかえると、霧 の流れるむこうに石造りの小屋がぽつんと残されている。 自分が死んだとき、こんな景色のなかにひとり立っているかも しれない。ふと、そんな気がした。そこで待っていると、 だれかが迎えに来てくれる。 (途中略) 心に残る荒れた風景のなかに、ときどき帰って住んでみるのも、 悪くない。 須賀さんの言葉の美しさが心に沁みる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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