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カテゴリ:シネマ
今年のカンヌ映画祭で話題になっていて、一体いつ公開されるのか、
と個人的に待っていた映画、「ラ キメラ」をついに観ることができた。 この映画は、若手女性映画監督アリチェ ロルワケル作、脚本も彼女、の 作品で、今年のカンヌ映画祭ではパルマ ドロ賞候補になっていた。 お話は、ざっと言ってしまえば、若い英国人男性が主人公で、彼のもと 恋人の思い出から彼が関わるトンバロリつまり墓荒らしグループの 冒険とでも言うべきもの。 年代は、1980年代になるそうで、だから今の墓荒らしのように技術的 にはまだ道具もプリミティブな時代。 私が興味を惹かれたのは、映画の舞台になった場所が、古代エトルリア 文化の栄えたスポットであるため。 ちょうどローマ北からトスカーナ南部には、今でもエトルリア地方と 言われる地域があり、実際に山歩きをしていると沢山のお墓に出会う。 撮影場所は、トスカーナ南部のモンテアミア-タ辺りから、モンタルチーノ、 ラツィオではタルクイニア、ブレラ、チビタヴェッキアなどとなっていた。 お話は非常にミステリーで、最後この英国人が深い墓に落ちてしまうところ で終わり、そこでもと恋人に会う夢を見る。 ひょっとしたらもう以前いた世界には戻れないのかも知れない。 もと恋人の着ている手編みニットからほどける赤い毛糸を頼りに彼は恋人 にまた遇えるかもとひそかに思うのだが。 赤い毛糸からすぐに連想するのは、ギリシャ神話に出てくる、クレタ島の アリアンナ。 ミノタウルスを殺すために来たテセウスが迷路に迷わないように糸を渡す。 監督に依れば、糸は物理的に繋がっていることを意味している。 私が住む所は、このエトルリア文化が非常に栄えた場所で、 息子が地元の高校に行っていた時には同級生の家族に代々の墓荒らし が何人かいた記憶がある。 勿論、公に墓荒らしとなっている訳では勿論なく、表上は市役所に 勤めていたり、映画のようにバルをやっていたりする。 映画のタイトルになるキメラは、一度アレッツオだか、コルト-ナの 考古学博物館でエトルリア時代のブロンズ彫刻を見たが、通常は フィレンツェの考古学博物館蔵になる。 架空の動物で、ギリシャ神話に出てくる。ライオンの頭と山羊の胴体、 蛇或いは竜のしっぽを持つ。 また、怪物の総称にも空想、妄想を表すことばにもなるらしい。 これも、監督に依れば、キメラが暗示しているのは、捕えようとしても 捉えられないこと、ものだとか。 映画の英国人の若者は、荒らされていない墓を見分ける能力があるらしく、 その墓に当たると気を失ったりする。 というのは、もう2千年以上経っているために墓は墓と見分けがつかない 場合がよくあるため。 この映画が日本で上映されることを祈りながら、少なくともキメラの 素晴らしい彫刻を観に、またミステリーなエトルリアにいらしてください。 この女性監督は今まで聞いたことはあったが、作品を観たことがなく 非常に興味深い作品を作っていると、感じた。 これからの作品に期待できそう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.12.26 19:01:24
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