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12


2006年02月13日
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カテゴリ:book

book


「21世紀版『アルジャーノンに花束を』」というコピーがついてます。わたしは『アルジャーノン・・・』がものすごく好きで名作だと思ってるので、売り文句を100%信用した訳でもないけど、ちょっと読んでみようかなぁと思ったの。
で、
読了後の感想は・・・これはこれとしていろんな問題提議があって、良書だと思うけど、『アルジャーノン・・・』とはぜんぜん違うんじゃないかなぁ。

超長文になったので、覚悟して読むべし;
------------------------------------------------
『アルジャーノン・・・』は、「幸せ」の意味と、喪失の物語なの。

『アルジャーノン・・・』の主人公は、知能が低くて自分が持っていないものを知らない、けど主観的にとても幸せ(に見える)。脳手術によって、自分が「持たなかったもの」や客観的に幸せでなかったことを知る。やがて、その手に入れたものをすべて失うことを知ることの不幸と絶望。

客観的に見れば、元の知能に戻ることはものすごく不幸にみえるけど、でも・・・得たものも経験もすべて忘れて「知らない」自分に戻っちゃったら・・・

物語は結末を明確には書いてないけど、本人は主観的には「そして幸せに暮らしました」かもしれないと思わせる。

この矛盾と不条理が名作の所以だと思う。

何を持ってたら幸せなのか。そもそも持ってる事が、喪失への不安が不幸なのじゃないのか?とか。まぁ、そんな話なんだけど。

--------
『くらやみの速さはどれくらい』の主人公は、「自閉症」というハンディはあるけど、本人に不足はないと思ってる。社会的にも、職もおうちも車も、趣味も友人も持ってて、問題なく自活してる(ように見える)。仕事の評価も高いし、友人からも尊敬される生活を送ってる。

それじゃ何が問題なのか。ノーマル(←文中に出て来る語彙なのでわたしがゆってる訳ではないです)が、ノーマルじゃない事を問題にする。ノーマルであることを求られる事に応えられない事が彼の問題。

これは、マイノリティーと人権がテーマだとわたしは思うのよ。

だから、自閉症者(障害者)を主人公しているのと、SF的なキーワードとして近未来、脳手術というのが共通している点だけで、ポスト「アルジャーノン」といわれるとしたら、それ自体がノーマルの曲解だと思うの。
そういう意味では、このコマーシャルコピーそのものが問題提議してるとも言えるけど。

もちろん、障害を持っているという事もマイノリティーの要素として描かれてるけど、この物語は社会的弱者としての障害者ではなくて、少数派として感じる多くの問題を描きたいのでは?と感じた。その点だけでも、『アルジャーノン・・・』が明らかに社会的弱者の主観に焦点を当ててる所と異なる。

今の自分で(自分が他人が)満足できないのか。
自分を否定してマジョリティーに合わせる必要があるのか。

保護と福祉の問題

少数派のために特別な何かを作るのは無駄なので、その少数派をなくしてしまおう。という。

現代社会は福祉が進んでいるように見えるけど、すでに「東横イン」のニュースでも社会的に表面化してきつつあるように、上から福祉や援助を強制されることは営利企業にとって,本音は嬉しくないししたくない。役所だって高齢者や要介護者への福祉が縮小傾向にあるのは事実。

良心と利益が葛藤して「ごめんなさい」が言えるうちはいいけど、自分の所為にしたくなくなったら、「あなたができない事が悪いのだ」という人がたくさん出て来るかもしれない。

アメリカの福祉や経済は日本より先行してるし、この著者は家族の中に自閉症を見てきているって事で、たぶん社会に何か危ういものを感じてるんじゃないかと思う。

さて、
で、
しかし、
でも・・・・・

ここまで考えさせられても、この物語の結論は釈然としない。とゆーか、よく分からない(笑

事実を述べることが大事で結末はなかったのかもしれないし、著者にも解決できない課題だったのかもしれない。

読むに値する良書だと思うけど・・・
SFジャンルとしては、まったくSFじゃないし(笑
物語りとしては、オチが甘いし伏線を落としまくってるし。

なんか、消化不良な感が否めない。
ので、やっぱ『アルジャーノン・・・』と比べてほしくないな、とゆーのが個人的な感想。





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最終更新日  2006年02月14日 00時06分00秒
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