雄気堂々(城山三郎)を読んで
今年の夏は本当に暑い。この蒸し暑い夏休みに、城山三郎の『雄気堂々』上下2巻の文庫本を読んだ。久しぶりのまとまった読書になった。この本は、渋沢栄一の生涯を描いた歴史物で、大変面白かった。幕末から明治維新を生き抜いた渋沢栄一は、大きな時代の変化に巧みに対応していった。主義主張をはっきりと持ちながら、それにいつまでもとらわれずに、時代の変化とともに自分自身の考えも柔軟に切り替えていった。但し、これは時代感覚に敏感であったのであり、毀誉褒貶ではない。その時々の変化に対して己の主張も常に見直し、変化に対応したということだ。また、その柔軟さが人のつながりを広げ、それが貴重な財産となっていった。日本の経済の基礎を築いた渋沢栄一の人間と、正に命を賭けた生き様が大変参考になった。これから社会に出る若い人にも、これから自由な生き方を目指す我々定年世代の方々にも是非とも一読を進めたい一冊である。