ザコＦ２の隠れ部屋

手紙形式なのでかなり読みやすいと思います。

登場人物５人の手紙を交互に載せながら、
お話が進むという形式で書かれています。
作者の前書きによると
“五人の登場人物がかわるがわる書く手紙をお目にかけ、
それがそのまま、文例ともなり、お手本ともなる“
という具合です。

登場人物は
英会話教室のオーナーの中年女性、
ファッションデザイナーの中年男性、
舞台の演出を志す青年、
元英会話教室に通っていたOL、
テレビが大好きで大学を留学しているニート青年。
の５人。
みんな個性があって、楽しいです。
ニート青年のカラーTVを欲しがるくだりは
時代を感じさせますけど、気持ちは良くわかる。
でも、こんなにあからさまにおねだりはしないなあ。

各章のタイトルも面白く、三島作品らしい（？）のを上げると、
肉体的な会いの申し込み、
同性への愛の告白、
心中を誘う手紙、
陰謀を打ち明ける手紙、
閑（ひま）な人の閑な手紙、
すべてをあきらめた女の手紙。
こんな具合。
これで手紙の文例になるの？なんて思っちゃいますが、
中身を読んでると、そうでもなくなるのが楽しいとこ。

登場人物、それぞれがそれぞれにペンフレンドで、
次第に輪になって、互いに知り合いになって、
あれこれ事件が起こるのが面白いです。

あと手紙ならではの仕掛けがあって、ニヤニヤしてしまいます。

で、最後に作者から読者への手紙があって、
師匠の手紙に関する考え方がなかなか面白いと思います。
そのまま人間観察にも通じているところも。