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(会員制)Shahryarの酒と美女の日々

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カテゴリ:音楽
「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は言わずと知れた往年のジャズの名曲だ。
1937年のミュージカル『Babes in arms』に使われた曲で、舞台ではミッツィ・グリーMitzi Green が歌い、また'39年のMGM映画『Babes in arms』ではジュディ・ガーランドが歌った。
1955年に映画化されたミュージカル「ジェントルメン・マリー・ブルーネット」(1937年作)のナンバーでもあり以後も多くの歌手に歌い継がれていて、自分がジャズを聞くきっかけになり聞けなるほどの曲を歌った、あのレディ・デイことビリー・ホリデイも歌っている.

ところでジャズの起源をご存知だろうか?!
アメリカの黒人奴隷によって生み出されたブルースが、南北戦争へて奴隷制廃止後も続いた黒人差別社会の中で変化して生まれてものだ.
その後マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、通称キング牧師によるあの「I Have a Dream」の演説で有名なワシントン大行進などの公民権運動で黒人差別は激減しそれと同調するようにジャズは一般的な音楽のジャンルのひとつとして発展していく。
しかしマイ ファニー バレンタインが生まれヒットした時代はまさに黒人差別の真っ只中で特にそのような社会で生きてきた黒人ミュージシャンの音楽は曲のテーマを越えてソウル(魂)の叫びとして世界中のJAZZファンに衝撃を与え絶賛されている.
つまりマイ・ファニーは日本でいえば戦後の混乱の中で美空ひばりのような歌手や米軍キャンプ巡りのミュージシャンなどによって歌い継がれた曲(例えば「赤いりんご」)のようなものだ。
だから初めてマイ ファニーを日本人のまだ当時は女子高生だった舞姫が扱うと聞いた時は、さすがにファンである前に一ジャズファンとしてあきれてしまった。
たしかにジャパンチャレンジもロシアカップもそれなりにフリーをこなし戦メリのファイブコンポーメンツのオール七点台に見られるように演技力も高まり芸術性も増していた。
特にロシアカップの戦メリのあの少女の初恋を想像させる初々しい爽やかな舞は、あれはあれで舞姫らしくていいなとも思った。
だがJAZZファンにとってはマイ ファニーを使うのなら、それだけでは寂しいかぎりだ。
NHK杯でも精彩を欠いていたし何も五輪選考の年にこんなテクニカルな曲を使う必要はないのになと思ったものだ。
ただ、あの時の舞姫はジャズの本質はしっかりと突いていた。

ジャズを扱う時に、陥りやすい罠がある。
よくテレビやなんかの歌謡ショーで日本の大物女性歌手がジャズを歌うことがある、ギラギラした服を着て、イイ女を演じようとする・・・
ジャズミュージシャンでさえそんな風にアダルトな雰囲気だけを強調して、ジャズで大事な心を伝えることがおろそかになってることが結構ある・・・
しかし例えば有名なJAZZ歌手、綾戸智恵さん(個人的にはトーク番組で見せるあの大阪のオバハンのイメージが強すぎて聴かず嫌いになっていったのだが)あの人がそんなギラギラした格好で男にアピールするように歌っていることがあるだろうか?!
綾戸さんも偉大なジャズミュージシャン達と同様に、ジャズプレースタイルは自分自身を出し尽くす、それ以上でも以下でもない、全く演出というものは無用の世界だ。
いわば、黒人差別を対にして、表面上の麻薬や売春などで成り立つ煌びやかな黒人街のイメージを表現するという過ちを犯すか、黒人差別の背景にあるような悲しみ、苦しみ、絶望といった人の心を表現するという黒人文化の本質との違いであろう。

マイ ファニーの舞姫、決して飾り気のある演出があるわけでもなく、イイ女への背伸びもない、そこには音楽を感じたままの心を裸にした舞がある
全日本や特にGPファイナルは出来栄えこそ今一でしたが、少しでも心に伝わるキチンとしたものが見せたいという想いに心打たれたものだ。
その想いの強さ深さに将来性を確信して、今日では現実が期待を追い越している

トリノ前にこんなインタビューがある、この録画は自分の宝物だ。

相手が松岡氏だったのが不本意ですが、パパラッチ被害も影響して引退も考えたという内容から始まり、その後「マイ・ファニー」等の振り付けの時のデヴィッド・ウィルソンとの会話、
「「ただmikiが感じたまま動け」って言ってました、「僕はただ振り付けをするだけ、後はmikiの気持ちから滑るんでしょ」と言われて(笑)」
「僕は自由にやれって言われるほどきついものはなかったんですけど」
「決められた事をきちっとやったら何回観ても同じようにしか観えないけれど、自分の気持ちで滑って良いよって言われたら、同じプログラムでも違うように観えると思うんですよ、その時の気持ちのように演技が観えたりすると思うから」
「本当の自分が演技の中にいるんですね」
その時、笑顔でうなずいた舞姫を観て、幼い可愛い顔をしてるわりにジャズのアドリブの精神が解ってんじゃんとびっくりしたんです。
そしてその後に「記憶に残るスケーターになりたい、いっぱいいる金メダリストより心に残る演技をした人って凄いと思う」という言葉を聞いた時に、この子はひょっとしてとしてと思って注目して観るようになったんです。
その後ある番組で「フィギュアで笑顔が必要か?」っていう質問があったんです、その中で舞姫は「笑わないことは無いけど作り笑いはしない」って言っていたんですよね、周りはびっくりしていましたが、自分は上に書いた舞姫のスケート感を知っていたのでそうだろうなと全く違和感がありませんでした。
それに以前、作り笑いをして自分にウソをついていたから駄目だったとも言っていましたしね。


ジャズに刻まれるミュージシャンのソウル(魂)の叫びの起源、つまりは黒人差別の深刻さはビリー・ホリデイの人生から十分に感じ取れることができる。
当時の黒人社会はその日暮らしができる収入があれば幸せのほうだった。
事実、黒人街には多くのストリートチルドレンがたむろっていたという。
生活に十分な収入を得る為には麻薬などの密売関係の仕事や売春関係の仕事など今では完全に違法とされる仕事に関わるしかなかった。
母子家庭だったビリーの母親も売春婦だったが、幼くしてレイプされたビリーは黒人少女という理由で売春の疑いをかけられ感化院に送られる。
その後、売春婦に身を落とした彼女だったが逮捕され、無一文で住むところも追い立てられる状況の中で偶然が重なりクラブ歌手としてデビューをする。
背水の思いで望んだ初舞台では、"Body & Soul"を唄う彼女に観客は皆涙したと言われている。
しかしプロデビューを果たした彼女に他の黒人ミュージシャン同様、アメリカ南部の州ではジム・クロウ法(黒人の一般施設利用を制限)の壁が立ちはかる。
白人女性歌手の代役を立てられ唄うことが出来なかったばかりか、他のアーティーショウ楽団員と一緒のホテルを予約することも、更にはレストランに入ることすらも出来なかったのである。
そしてそのジム・クロウ法は、彼女の父親の命をも奪うこととなる。
南部の街、テキサス州ダラスで病で倒れた彼を、黒人という理由で何処の病院も診療を拒絶し閉め出した。その為に彼は非業の死を遂げてしまう。
Strange Fruit(奇妙な果実)、自分はビリーの歌うこの曲で生まれて初めて音楽で涙を流した。
そしてその余りにも絶望的なシャープな悲壮感に一番好きな曲の一つにも関わらずほとんど聞くことができずにいる。
そのうちビリー自体の歌声にもそのような感覚を持ち始め、最後にはJAZZ自体に一定の距離を置くようになってしまった。
話それたが奇妙な果実とは、今の日米では考えられないが、木にぶら下がる黒人の死体のことだ。
当時の南部アメリカでは黒人をリンチにかけて首を縛り、木に吊るし火をつけて焼き殺すという蛮行がしばしば見られた。
(実は去年の米大統領選、南部の州では人形を使って同じような事をして、反黒人をアピールする光景があったという)
そのような現実をルイス・アレンが楽曲に仕上げビリーが歌い上げた、そうこの曲の歌詞にパパの死を重ねあわせて・・・
もちろん白人社会からの圧迫もあり同じ黒人からも否定の意見もあったが彼女は歌い続け大ヒットを生むこととなる。
だが人生とは残酷なもので、この頃から彼女を手なずけ彼女の収入をむしりとる男が入れ替わり彼女の周りに現れることとなる、その多くが薬物や暴力を使って・・・
もともとは薬物とは無縁ではなかった彼女だったが、その後は歌手活動にも支障をきたすほどの中毒になった。
歌声も健康も害し、繰り返し逮捕され生涯最後のアルバムでの歌声はボロボロ、病で44年の短い生涯を終える。
もっと皮肉なことはビリーが唯一の相続人である前夫(まだ離婚手続きは完了していなかった)に遺したのは1,345ドルであったが僅か6ヵ月後の1959年末には、彼女のレコードの印税は10万ドルに上った。
ビリーが使った金額と、彼女が騙し取られた金額とのバランスすら黒人差別社会を軽蔑せずにはいられない。
このような悲惨なビリーが最後に生んだのがLEFT ALONE(レフト・アローン)だ。
ビリーが晩年に作詞した歌にマル・ウォルドロンが曲を付けたものだが残念なことに彼女の歌声録音は残っていない。
メロディーパートをアルトサックスのジャッキー・マクリーンが奏でたものが有名で自分がJAZZを聞くきっかけともなった。
一人ぼっちで去っていった・・・彼女のJAZZは最高のもので私も十二分に堪能させて頂いているが、その裏に隠された悲劇のビリーの人生をどう受け止めてあげたら良いのか、この悩みはおそらく一生解決できないに違いない


先日マイケル・ジャクソンが亡くなりました。
自分は「スリラー」を小学校高学年や中学生として聴いた正にベストヒットUSAの全盛記を知っている年代、しかしマイケルを好んで聴いていたわけではありません
ただ洋楽に目覚め始めた頃に、バンドエイドやUSAforAFRICAなどで一流ミュージシャンをより多く知り、ライブエイドでは生まれて始めて徹夜というものをしたものでした。
そういった意味ではマイケル・ジャクソンという人は一目を置く特別な存在でした。
(もっともジャクソンファミリーではジャーメイン(ホイットニーとのデュエット)やジャネットのほうが多く聴いていましたが(笑))
マイケル・ジャクソンというミュージシャンは、真にトップスターになる条件から肌の色の差別が無くなった象徴であり、偉大な功労者だと思っています。
もちろん、大活躍をした黒人の有名人は数多くいますし、今日の黒人差別の解消はマイケルの力だけではありません。
ただ、誰かが白人の差別心に対して批判・分離という強い風ではなく、感動の共感・共有という熱い太陽光を照らさなくてならなかった事を考えると、マイケルは最後の決定的な貢献をしたと思います。
くしくも昨年、初の黒人大統領が誕生しましたが、早過ぎる死の中、その歴史的瞬間にマイケルが立ち会えたのは不幸中の幸いだと思います。
謹んでご冥福をお祈りします


PS.感覚的なことなので上手く言えませんが、舞姫のEXの「ノイズ & ファンク」、自分自身を出し尽くすジャズ(黒人文化)と舞姫との組み合わせは素晴らしい絶妙の組み合わせ、本当に心から嬉しいですし実際に選曲は良いと思います。
しかし、あの衣装とセクシーさを魅せる演出は関心しません、ジャズを扱う時に、陥りやすい罠にはまっていると思います。
しかも、演出でイメージが出来上がり過ぎていて、舞姫の自分自身を出し尽くすというオリジナリティーが発揮し難い
(しかしこれは舞姫が悪いのでは無く、このEXの振付師の方向性が間違っていると思います。間違っても舞姫本人への批判ではありません。)
「ノイズ & ファンク」の話は次で最後、しかし批判は言い尽くしたので残るは発展的な話、この2回分話したとおり「ノイズ & ファンク」は自分がスケーターとしての舞姫に酔いしれている哲学的な表現力の、ど真ん中を突いている部分も多々あります。
何せ自分の推薦曲とジャンルが凄いかぶっていて「THE ICE」を魅て凄い驚きました。
推薦曲、つまり我が歌姫の曲の話を次回はします。





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Last updated  Oct 1, 2009 09:28:30 PM
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