等々力善福の雑文書いてます

　超党派と言われる「イラク研究グループ」の勧告が６日に提出された。「米軍の
２００８年３月までに撤退」と「シリア、イランとの対話」を求める内容になっている
という。この勧告を受けてブッシュ大統領は、真剣に検討するが、全面的には賛成
しないとのコメントを発表しています。この勧告をどう受け止めるべきなのでしょう？

　まず、なぜ２００８年３月なのか？についてですが、これが２００８年の大統領選を
睨んでの決定であることは、マスコミの見方として一致しているようです。しかし、
共和党にとって有利なのか、民主党にとって有利なのかは意見が分かれるところ
です。民主党はこの提言を強く支持しているということですが、大統領選の時期に
米軍が撤退を進めていれば、選挙の争点が他の問題にシフトするという意味で、
共和党にとって少しはマシな状況を作り出す可能性があるからです。
　一方、なぜシリアとイランなのかということですが、これは単純で、アメリカが作り
出した現政権がシーア派中心であるからです。米軍が抜けることによって出来る
力の真空状態を、普段は敵と見なしているシリアとイランによって補ってもらおう
という狙いなのです。ちょっと「合従連衡」を連想させる戦略ですよね。
　この様に演出することで、アメリカは、フセイン政権とその支持母体であった
スンニ派を政治の中心から追放しイラクを安定させたという「戦争の大義」を
手に入れることが出来るのです。秀逸といって良い戦略ですよね。

　報道によると、共和党のマケイン議員は、この提言を「非現実的」と言ったそう
ですが、事実はその逆で、このグループは「現実的」過ぎるのです。
　シリア、イランを取り込んでイラクを安定させることが出来たとしても、その過程で
スンニ派が弾圧されることは避けられません。スンニ派はアメリカのイラク政策の
為のスケープゴートというわけです。昨日の毎日新聞は７面で「シーア派伸長を
アラブ諸国警戒」という記事を載せています。
　イラクの現状を「内戦」とするかどうか議論が分かれているそうですが、内戦的な
状況の中で、現政権はシーア派民兵組織をコントロール出来なくなっているという
ことです。戦争開始当初の大義であった大量破壊兵器は発見されず、民主主義
政府の樹立も形骸化、無意味化する中で、イラク研究グループは非常に現実的な
提案をしました。ブッシュ大統領を中心とするアメリカ政府がどのような判断を下す
のか注目されます。