等々力善福の雑文書いてます

　昨日テレビのニュース番組を見ていたら、北朝鮮の代表が、「日本が拉致問題を
取りあげるなら、６カ国協議に参加するな！」といったことを言うシーンが放映された。
せっかく交通費を使って会議に参加するのに、ずい分失礼なことを言うなと思ったが、
日本が何をしに行くのか、ちょっと心もとないのも確かです。

　朝鮮戦争のメインキャストである残りの5カ国に比べると、日本が「日米韓」、
「中ロ朝」という大雑把な枠組みで、数合わせ的に参加しているように見えるのは
否めません。朝鮮戦争で日本は大儲けしたんですよね、確か。
　先月の国連総会では北朝鮮の人権問題に対する非難決議が採択されたの
ですが、この時中国とロシアは反対に回っているし、韓国は前回は棄権していた
のが渋々賛成に回ったという話です。つまり、「おまけ参加国」の日本が、拉致問題
という「花火」を打ち上げることに成功すれば、会議はいきなり真っ二つになって
しまうと予想されます。

　こういった日本の火遊びの効果とは逆に、米朝2カ国はお互いに譲歩することを
視野に入れつつ、具体的な成果が出るかはともかく、交渉の席に着くことを決め
ました。新聞などが報じるところによれば、中間選挙での共和党の敗北の影響を
受けて、アメリカは早期に成果を出さなければならず。北朝鮮にも成果を出さ
ねばならない動機があります。日本を含めた西側諸国の資産凍結、経済制裁が
ジワジワと効いてくるだけでなく、２００８年春頃にイラク駐留アメリカ軍が撤退し、
アメリカ人の焦点が北朝鮮に向いてくる可能性があるからです。
　したがって、米朝の双方に交渉を前進させるべき動機があるので、今回の6カ国
協議では、ある程度の歩み寄りを期待したいものです。最低でも次回の協議の
日程と概要を決め、出来れば資産凍結や経済制裁の解除、核査察の日程や
平和協定の内容まで話が進めて欲しいものです。

　以上のように米朝が歩み寄りを見せる中で、日本はその反対の効果をもつ拉致
問題を取り上げると言っています。なぜでしょうか？
　「週刊現代」１２月１６日号は、朝鮮総連に対する警視庁公安部の一斉捜査の
記事を掲載しているのですが、ある公安関係者の話として次のようなコメントが
ありました。
「今回の捜索はそもそも11月２１日に行う予定でした。しかし、郵政民営化反対
議員の自民党復帰問題が浮上し、安部政権へのダメージになる可能性が出て
きた。そこで、”支持率を稼げる”北朝鮮叩きを、復帰の山場である２７日にもって
きたのです。敢えて物々しく大々的な捜索を行ったのもそんな理由があるんです」

　上記の文脈から推測すると、日本のみならず世界が注目する6カ国協議で、
拉致問題を取り上げることにより、造反議員の復党問題で低下した支持率を
回復することを、政府自民党は狙っているのでしょうか？
　この仮説的な狙いに水をさすようなデータが、１０日の読売新聞に載っていました。
2面の『「北の核に関心」７９％』という小さな記事です。内閣府の世論調査によって、
日本人は、拉致問題に対する関心（８６．７％）とほぼ同水準の関心を核問題
（７９．５％）およびミサイル問題（７１．５％）にもっていることが明らかになりました。
　6カ国協議で拉致問題を持ち出しても、メインの議題である核問題の足を引っ
張っては意味がないと推測するのですが、、、

Ｐ．Ｓ．　こういった文章を書いていると、拉致問題を軽視しているようにとられる
　　　　　かも知れませんが、決してそんなことはありません。拉致問題は
　　　　　日本人数十人の生活と生命に関する問題なので非常に重要です。
　　　　　そして、核問題は朝鮮半島に住む北朝鮮人、韓国人、在韓米軍全ての
　　　　　生命と生活に関する問題なのです。