等々力善福の雑文書いてます

　新しい教育基本法が昨日の参院本会議で可決、成立しました。改憲派は
中身にかかわらず賛成、護憲派はこれまた中身にかかわらず反対し、現場の
教育者たちは現状からかけ離れた理念だとして、なかなか読んでくれる人が
いないみたいですが、毎日新聞は今日の紙面（１０面）で新旧教育基本法全文を
掲載していたので、私は読んでみました。

　現状からかけ離れた人間になるのはイヤなので、最近問題になっている「いじめ」
や「未履修」などを視座（しざ）、ビューポイントにして読んでみました。
　いじめを意識しながら読んでいくと、一番引っ掛かるのは前文のところです。

、、、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな
人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、、、

　学校でいじめをやっている人間を頭に浮かべながら上記の前文を読むと、
一言一言が丹念に否定されていく感じがします。いじめが反教育的な行動
であることが良く分かりますよね。
　視座を逆にして、教育基本法の方から見ると、いじめに加担する教師もいると
いうのが信じられない感じです。

　また、未履修を意識しながら読んでいくと、引っ掛かるのは今回付け加え
られた「愛国心」に関する記述です。

　伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、
他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

　１１月２３日に「愛国心強制はイヤ」という題でこのブログで書いたのですが、
一言に愛といっても、キリスト教的な愛もあれば、軍国主義的な愛国心もあれば、
儒教の言う「孝」に近い愛などもあり、色々な愛があるようです。
　基本法の愛国心に関する記述を読む限り、この愛は理解が深まっていくことに
より生まれる教養（人）的な愛のようです。未履修問題が吹き荒れる日本で、
このような愛が得られるのでしょうか？
　日本史も分からない人間が「伝統」と「文化」を尊重できるとは思えず、世界史の
知識がない人間が「国際社会の平和」と「発展」に寄与できるとも思えないのです。

　人を教えるべき立場の学校、しかもその多数が公然と違反行為を行っていて
国中大騒ぎになったのが未履修問題です。国家が必要とする人材を供給する
という思想のカケラすら持たず、ひたすら進学実績をあげるべく猪突猛進
（来年は亥年ですね！）したのでしょう。

　ともかく、現実的な視座で教育基本法を読んでいくと、理想と現実のギャップが
大きいというよりは、ちょうど正反対を向いているというレベルに達していることが
分かります。教育基本法から始まって、文科省、教委、校長、教頭、教員、生徒
と学校の現場に至るまでに、「個の尊厳」は「いじめ」に変わり、「愛国心」は
「未履修」に変わります。「教育再生」の長い道のりを感じさせますよね。

Ｐ．Ｓ．　民主党案では「日本を愛する心を涵養（かんよう）し」との文言が高い
　　　　　評価を得ているようです。でも「涵養」って学校で習ってない気がするの
　　　　　ですが、、、