新世界より (Shinsekai-yori) 悪鬼(Akki)の話 (Evil spirit) 【Anime】【日本語】【English】
字数制限の関係で別にアップしました。悪鬼の話が出て来る第1話はこちら→ 第1話「若葉の季節」【悪鬼の話】今から百五十年ほど前の話。山の中で薬草を採っていた少年がいた。夢中になって薬草を探しているうちに、八丁標の注連縄の前にやってきた。内側にある薬草はあらかた採り尽くしてしまっていたが、ふと目をやると、外側には、まだたくさんの薬草が残っているのが見えた。以前から、絶対に八丁標の外に出てはいけないと、大人に釘を刺されていた。どうしても出る必要があるときは、必ず大人に伴われてでなくてはならないのだ。だが、近くに大人はいない。少年は迷ったのだが、すこしくらいならいいだろうと考えた。八丁標から出るといっても、目と鼻の先である。ぱっと出て、薬草を摘み、すぐに戻ってくればいい。少年は、そっと注連縄をくぐった。紙垂が揺れて、かさかさという音を立てた。このとき、彼は、とても嫌な感じを覚えていた。大人の言いつけを破ったことに加えて、これまで感じたことのないような不安があった。何でもないと強いて自分を励ましながら、薬草に近づく。すると、向こうから悪鬼がやって来るのが見えた。悪鬼は、少年と同じくらいの背丈だったが、見るも恐ろしい姿をしていた。あらゆるものを焼き尽くす怒りが、炎のような光背となり、ぐるぐる渦巻いている。悪鬼が通り過ぎると、近くにある草木はことごとく薙ぎ倒され、爆発し、めらめらと燃え上がった。少年は真っ青になったが、悲鳴を上げないように我慢して、そっと後ずさりした。注連縄の下をくぐって、八丁標の中に入れば、悪鬼には姿を見られないはずなのだ。だが、そのとき、少年の足下で枯れ枝が折れる音がした。悪鬼は、無表情なまま顔を向けた。ようやく怒りの対象を見つけたというように、こちらを凝視している。少年は、注連縄をくぐると、一目散に逃げ出した。八丁標の中に入ってしまえば、もうだいじょうぶなはずだった。だが、振り返ると、なんと、悪鬼も注連縄をくぐって侵入してきたではないか!このとき、少年は、取り返しのつかないことをしてしまったと思った。八丁標の中に、悪鬼を入れてしまったのだ。少年は、泣きながら山道を走った。悪鬼は、どこまでも追ってくる。少年は、注連縄に沿って、村とは反対の谷川に向かって走った。背後を見ると、追いかけてくる悪鬼の顔が藪の間から見え隠れしている。両の眼だけがぎらぎら光り、口元には笑みがある。悪鬼は自分に村まで案内させようとしている。このままではいけない。もし、このまま悪鬼をつれて村に戻れば、おそらく、村は全滅してしまうだろう。最後の藪を抜けると、目の前は断崖絶壁だった。深い谷底から、轟々と川の流れる音が反響してくる。峡谷には一本の真新しい吊り橋が架かっていた。少年は吊り橋を渡らず、今度は断崖に沿って谷川の上流に向かって走った。振り返ると、悪鬼が橋のたもとに来て、こちらの姿を見つけたところだった。少年はひたすら走った。しばらくすると、前方に、もう一本の吊り橋が見えてきた。近づくと、長年の風雨に曝されてぼろぼろになった吊り橋は、曇り空を背景に黒い影となり、おいでおいでをするように不気味に揺れていた。この橋はいつ落ちてもおかしくない状態だった。もう十年以上、誰ひとり渡った村人はおらず、少年はいつも、村の人から絶対に渡ってはならないと戒められていた。少年は、ゆっくり橋を渡り始めた。負荷のかかった蔓が、ぎしぎしと嫌な音を立てる。足元の板はほとんど朽ちかけており、今にも砕け散りそうだった。吊り橋の中程まで来たとき、ふいに橋が大きくたわんだ。振り返ると、悪鬼が橋を渡り始めたところだった。悪鬼が近づくにつれ、橋の揺れは、どんどん大きくなる。少年は、一瞬、目も眩むような谷底に目をやった。顔を上げると、悪鬼はもう、すぐ間近まで迫っていた。忌まわしい顔がはっきりと見えたとき、少年は隠し持っていた鎌を揮い、吊り橋を支える一方の蔓を一気に切った。吊り橋の床は垂直になり、少年は危うく滑り落ちそうになったが、何とかもう一本の蔓にぶら下がった。悪鬼は落ちただろうか。少年が見ると、何と、同じように同じように蔓にしがみついているではないか。悪鬼はゆっくりと、こちらに恐ろしい目を向ける。鎌は、谷底に落としてしまった。もう一本の蔓を切ることはできない。どうすればいいのだろう。少年は絶望して、天に祈った。僕の命はなくなってもかまいません。どうか、悪鬼を村に近づけないでください。少年の願いが、天に聞き届けられたのか。それとも、ぼろぼろになった吊り橋の一本の蔓は、どのみち重みに耐えられなかったのか。吊り橋はぷっつりと切れて、千じんの谷底へと落ちていった。少年と悪鬼の姿も見えなくなってしまった。それ以来、今日に至るまで、悪鬼は一度も現れていない。 It's a story from about 150 years ago.There was a young man who was picking medicinal plants.While he searched eagerly, he went to the Shimenawa.(Shimenawa are rice straw used for ritual purification in the Shinto religion.)As he looked beyond the rope he saw that there were plenty of medicinal plants.The Elder had erected the boundary mark so that no one crosses it at any time.If it was unavoidable, you needed to go along with an adult. but...He saw an Evil spirit approaching from his opposite side.Akki was trying to make his way into the village.At this rate...If he returns to the village with the evil spirit...The village will be destroyed.He pondered on what he should do.I do not care for my life, please do not let the evil spirit get close to the village!Since then Akki hasn't been found ever this that happened.↓足あと、ことづてが残せます(要登録)