(↑ちなみに左奥の人物は、岩城滉一氏)
中篇~クールスとの第一遭遇~
黒色に統一されたオートバイと黒い革ジャンに身を包んだ男達。
表参道と明治通りの交差点にあった
「レオン」を溜まり場としていた。
そのグループ名は「クールス」。
キャロルのメンバーと親交があり、
そのため解散コンサートのサポートを努めた。
当時十代の私自身は、「キャロル解散」後の
喪失感で一杯であった。
その頃といえば、当然インターネットなどあろう筈もなく、
こういった芸能関係の情報は今のようにメディアで
日常的に窺えることなどなかった。
大体は芸能雑誌でしか知りえないし
早いとしてもラジオの深夜放送からというありさまだった。
LP「グッバイ・キャロル」にゲスト出演していたのは
知っていたが音声のみでは興味が沸くはずは無い。
なので、「クールス」については半年近くは詳しく知らなかった。
そんなある日の出来事だった。
私は近所の商店街にある、当時としては結構大きな楽器屋
を訪れていた。
ここは一階がレコード売り場で
二階が楽器売り場にわかれており、
レコードの在庫に関しては半端でなく大量で
いつも新曲のチェックに通っていた。
その時、突然私の耳に
”ヴォン ヴォン ヴォン”
とバイクのアクセルを吹かす音が聞こえてきた。
「これはホンダのCB750Fourか
カワサキのZ2(ゼッツー)の排気音だな?!」
わくわくしながら慌てて店の外に走り出て、
その正体を確かめようとしたのだが・・・
店の前には数台の自転車と歩行者、
聞こえてくるのは少しの雑踏のざわめき、
パチンコ屋のアナウンス。
オートバイの姿などどこにもない。
「?」
店に戻った私の”キョトン”とした顔を見て、
顔見知りの店員がかすかに笑っている。
そのわたしの耳に軽快なロックン・ロールが大音量で
流れ込んできた。
「夜明け前の むらさきのHigh-way オレの心を 今 走らせ
Oh my baby yes my lover 会いにいくんだ すぐに
I love you with my heart
星さえ うすれて」
!
「キャロル」とは違った、新鮮なリズム、甘いが力強いボーカル。
今まで聞いたことがない。
そしてラストに聞こえてきた、オートバイが走り去る音。
「これだったんだ・・・。」
落ち着いていつもの視聴ブースに入ると、
そこに立掛けてあるシングルレコードが目に入った。
「クールス衝撃のデビュー 紫のハイウェー」
ジャケに写る、いかにもワルそうな
だがマブイ男たち。
・・・コレは、買うっきゃない!
私は迷わずそのレコードを手にしてレジへと向かった。
今思えば、私の好みを知るあの店員が
あえて掛けてくれたのかも知れない。
ともあれ、私はわき目も振らず家に帰ると
近所の迷惑顧みず、大音量で何回も何回も
そのレコードを聞いた。
その15年後、あの甘いが力強いボーカルの本人”ボス”を
エスコートしているのが私だとはにわかに信じられなかった。
だが、実はそれより以前に「クールス」のオリジナルメンバーに
遭遇した経験があったのだ。
<続く>
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