カテゴリ:経営
アクティビストとは「物言う株主」とも呼ばれます。アクティビストは投資先企業の株式を一定以上保有することで経営陣に対して経営改善策などを積極的に提案し、その企業価値を高めてキャピタルゲインなどの利益を得ようとします。国内外の投資ファンドがアクティビストの代表格です。アクティビストの活動によって株価に少なからず影響が出ることから多くの投資家の注目を集めています。 アクティビストで有名なのはバリューアクト・キャピタル・マネジメント、エリオット・マネジメント、サード・ポイント、ダルトン・インベストメンツ、キング・ストリート・キャピタル・マネジメント、が世界的に有名です。主な活動内容は取締役の選任や解任、役員報酬の引き下げ、増配要求、自社株買いの要求、声明の発表などがあり、経営陣に対してこれらを提案する際、よく使われるのがホワイトペーパーです。ホワイトペーパーは様々な業界で使われていますが、アクティビストの世界では投資先の経営陣に対して提案や要求を伝える文書(経営改善提案書)をホワイトペーパーと呼んでいます。 アクティビストは大きく分けて3種類あります。能動的アクティビストは高い利益の実現を目指すために経営陣に積極的に要求を突きつけます。少数の企業に集中して投資し保有率を高め、経営者との対話を図りながら株価重視の経営政策の実現を目指すのが特徴です。受動的アクティビストは年金基金や機関投資家に多く受動的な権利行使を行います。長期投資を基本として投資している企業の経営改善を図っていくのが特徴です。社会運動型アクティビストは直接的な収益の獲得ではなく企業のESG対応の改善を図ることで企業価値につなげていくことを目的として活動しています。ESGは「環境(Environment)」「社会(Society)」「ガバナンス(Governance)」を意味しています。 海外での活動が多かったアクティビストですが近年では日本でも存在が注目を集めるようになりました。そのきっかけの一つが世界的な金融緩和による投資状況の変化と言われています。日本の上場株式に投資する国内外の機関投資家が「責任ある機関投資家」であるための有用な諸原則、いわゆる日本版スチュワードシップコードを2014年に金融庁が策定したことや企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために定めた諸原則であるコーポレートガバナンス・コードを2021年に東証が定めたことより風向きが変わり、アクティビストの活動が活発化しました。 サード・ポイントは米国を代表するアクティビストファンドで大企業に対して臆することなく強気な要求を繰り返すのが特徴です。日本での主な投資先はセブン&アイホールディングスやIHI、ソニーがあります。ソニーへの投資で2度にわたって大量の株式を保有し半導体事業の分離・独立やオリンパスなどの株式売却を求めました。現在はほとんどまたはすべてのソニー株を売却したとみられています。 バリューアクト・キャピタル・マネジメントは2000年にジェフリー・アッペン氏によって設立されサンフランシスコに拠点を置くアクティビストファンドです。最近では同社のメーソン・モーフィット氏を役員として送り込んでマイクロソフトやセールスフォースに投資して株価を上げ利益を得ました。日本では2018年から投資を始めており、オリンパスの株価を2020年12月に3倍まで上昇させました。他の日本企業への投資先には任天堂があります。 エリオット・マネジメントは1977年にポール・シンガー氏が設立した米国のファンドで世界最大のアクティビストと言われており、その運用資産は2022年8月時点で500億円を超えるとされています。最近はテキサスインスツルメンツに投資しており、半導体の過剰設備投資に対して是正を要求しています。2026年には50%の過剰生産となり、設備投資計画を見直せば36%のフリーキャッシュフローが改善されると提案しており、同社がこれを飲めば、他の半導体企業もアグレッシブな設備投資の見直しの契機になると言われています。2021年に香港の拠点を閉鎖し、人員をロンドンと東京に移すと発表しました。そのため今後は日本企業への投資が増えるのではないかと考えられています。 アクティビストの影響は日本企業に及んでいます。歴史的に企業は借入に依存していたので企業に対し最大の影響力を持つのは株主より銀行でした。株主は黙って経営陣を支持するものでした。象牙の塔のように情報開示もしない閉鎖的な日本のビジネス界はアウトサイダーに抵抗を示すだけでしたが、政府と東証が連携し日本企業が株主還元に注意を払うようになったことで状況は変わりました。PBR1倍割れの企業が多く、東証改革要請もあり、日本企業の経営は時価総額を上げるための計画立案を迫られています。日本の経営者は米国とは違い、プロフェッショナル経営者ではないため、アクティビストの提案をよく考えざるを得ない状況に追い込まれています。しかし、こういった提案・要求は理不尽なものではなく、投資先に対する責任を果たすものでもあるので、日本企業を資本コスト経営重視に方針転換させるには良い機会となります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年07月01日 07時58分14秒
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