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村松克哉

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2024年11月
2024年07月21日
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カテゴリ:政治



 米国では州や市・町によって最低賃金が定められていますが、その格差は大きいです。カリフォルニア州のファーストフードで働く従業員の最低賃金は時給20ドルです。ニューヨーク州のフードデリバリーの最低賃金は時給19.95ドルです。1ドル=160円換算で時給3200円です。日本の最低賃金は、最高は東京で1113円(令和5年10月発効)、最低は岩手で893円です。全国加重平均で1004円ですが、日米で比べると3倍以上の開きがあります。
 人件費の高騰は価格転嫁につながり、売上や利益を圧迫しますが、米国の最低賃金は日本の3倍以上あるにも関わらず、企業業績は堅調です。ここにきて失業者や見通しに陰りが見えてきているとは言え、日本とは比較にならないほど経済は底堅さを見せています。そもそも日本の最低賃金は先進国の中でも低い方で、昨年は韓国にも追い抜かれました。岸田首相は地域間是正に取り組むとしていますが、地域間格差が問題ではありません。人手不足も問題ではないと思います。最低賃金額そのものが問題なのです。
 海外の最低賃金はインフレ率に連動する最低賃金の設定をしていますが、日本はデフレ脱却を理由に最低賃金に手を付けてきませんでした。消費者物価上昇率を引いた実質賃金はマイナスのままで日本は最低賃金が低いだけではなく一般の会社員の平均賃金も実質的にマイナス成長のままなのです。日本は海外のようにインフレ率に応じて自動的に賃金が上がるシステムがないため、今後もインフレ率に賃金の上昇率が追い付かない可能性が高いです。日本の賃金が一向に上がらない理由として政府による賃金と物価連動によるサポートがないことが海外と比較して挙げられます。
 二つ目は正規雇用と非正規雇用の賃金格差が激しすぎることが理由として挙げられます。時給換算で2倍の格差があります。同一労働・同一賃金は掛け声だけで実際は非正規労働者を増やして賃金を抑制してきたことで日本の賃金が一向に上昇しない風土を作り上げてしまいました。国際比較でみると、正規雇用に対する非正規雇用の時間当たり賃金の比率は、日本が64.8%に対して、英国は85.1%、フランスは81.1%、イタリアは78.8%、ドイツは73.6%となっています。日本は海外と比べて正規雇用と非正規雇用の賃金格差が大きいことがわかります。
 三つ目は男女間格差が絶望的に拡大していることが理由として挙げられます。OECDのデータによれば日本の男性賃金の中央値を100とすると、女性賃金の中央値は77.5です。OECDの平均は88.4,ニュージーランドやノルウェー・デンマークといった90を超えている国と比較すると日本の男女間賃金格差は大きな問題ですが、歴代政権はこれを放置したままです。海外と比べて男女間格差を解消するだけでも平均賃金は上昇していくはずです。上場企業が役員の男女比率の実態(2022年7月末で9.1%)を変えていくなど企業や社会全体が男女間格差を是正しない限り、日本は海外と比べて男性と女性の賃金格差が大きいままであることがわかります。
 四つ目は全労働者の8割超が労働組合に加入していないのも理由として挙げられます。とりわけ日本の労働組合は企業別の単体の労働組合であり、欧州のように業種別の組合組織になっていないため、労働者の権利は守られず、労働組合は企業に忖度してしまい、いつまでたっても賃金が上がらない仕組みが出来上がってしまっています。業種別労働組合に転換するには連合など大きな労働組合が先頭に立って運動を進めていく必要がありますが、日本では大企業の労働組合も自分の地位を守るだけで精一杯の状況です。このように労働組合が変わっていかない限り、日本は海外と比べて労働者の権利が守られない土壌にあることがわかります。
 特に日本の場合は賃金格差が海外と比べて大きいために大企業中心の春闘のベアが過去最高といっても全企業数の約9割・従業者数の7割を占める中小企業の賃金上昇とは大きな乖離があるため、賃金と物価の好循環は不可能です。最低賃金が業種によっては時給1500円になったとしても難しいと思われます。そもそも現在の為替レートから考えても1500円は1日8時間働いて暮らしていける最低限の数字ですが、最低賃金上昇率がインフレ上昇率に連動していないとすぐに意味をなさなくなります。価格設定・賃金設定は立法府や行政の手が届きにくいと言われていますが、海外の状況を見る限り、そうとも言えません。





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最終更新日  2024年07月21日 06時39分04秒
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