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2008年03月23日
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先日に引き続き、柳沢教授ネタでございます。



19巻の途中から24巻までは、それまでの読み切り形式ではなく、「昭和20年編」という長編になっています。
玉音放送のシーンから始まるこの長編では、教授はまだ学生です。
ひょんな偶然から、であった貝塚邸の人々。GHQに占領軍将校の住まいとして接収されようとしている貝塚邸を守るために、嘘からはじめた戦災孤児のための学校。これまた偶然から教授がその先生役となります。

実に、さまざまなタイプの人間が登場します。
「戦災孤児」とひとくくりに呼ぶその中の個々のきらめき、大人も子供もない、物理的な制限が厳しく、精神的な枠組みが混乱している状況での「生きる」という行為。そこに「先生」と呼ばれながらかかわる人間と「学ぶ」「教える」行為。

途中から「研究者」である教授の実験とは対照的な手法を用いる「教師」倉田先生がこの学校に関わってきます。決定的に異なる手法を用いる柳沢とこの倉田先生とは、対極の立場を表すための登場ではなく、その描写も、表面的なもの・一般的な解釈ではないです。
なにげない場面、やりとりの中に、「登場人物」としての立ち位置を超える「人格描写」がきちんとあらわれているところは、やはりすばらしいなあ、と思います。

過酷な体験を潜り抜け生きている子ども達、貝塚邸の人たち、GHQのウィリアム・アレン中佐(実はこのアレンの出自と貝塚邸は非常に深い因縁があって、それこそがメインテーマになっているのですが)。
さまざまな人間と関わりながら、教授は自分自身の外側にも、内側にも、さまざまな事を発見していきます。たとえば、教育に関する気づきの中のほんの一例ですが、「画一的な授業」の目的にも、気づきます。「教室」で行われる授業は、千差万別な子ども達が、それこそなにに興味を持つのか、いつその萌芽が芽生えるのはわからない子ども達が、その種子を宿す「きっかけ」づくりなのだ、ということ。

このお話を読んでいると、本当にさまざまなエピソードがあって、できればここですべてそのまま引用したいくらいなんですが、それは犯罪になるので(笑)講談社さんが、この19巻からのお話を独立した本として出版してくれないかしら、と願っております。

最後に、とてもキツくて素敵な貝塚婦人の一言を。
「そうやって人のことをなめている間はね 実は自分のことはなーんにも見えちゃいないんですよ。だから人をなめたまま大きくなるとどうしようもないトンマに成長しちまうのさ」
だからしつけは大切だそうです。・・・はい、すみません。

この「昭和20年編」は、ほんとうにいろんなテーマが深く考察された一編です。
とても私ではきちんと紹介できないため、氷山のはじっこのほんのひとつまみをご紹介しました。






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最終更新日  2008年03月23日 23時48分07秒
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