大動脈弁置換術後の生存は、機械弁が生体弁に優る
ご参考。
手術後の余命は気になりますね。
スウェーデンで実施された住民対象研究によると、機械弁による大動脈弁置換術を受けた50代の患者は、生体弁を使用した患者に比べて、長期の生存率が3分の2ほど有意に高かった。
しかし、60代の機械弁患者においては、このような生存の優位性はみられなかった。
この機械弁による生存率は、50~69歳のコホート全体でもなお、有意に高かった。
機械弁が生存で優れているのは驚くことではないが、「それでも、われわれの研究の結果は重要だと考える。なぜなら、臨床ガイドラインでは支持されていない、若年者への生体弁の使用が、近年、スウェーデンにおいても国際的にも、増加傾向にあるからだ」と報告者は述べている。
この研究結果は、SWEDEHEART のレジストリからのコホートに基づいて実施され、2015年11月11日付けでEuropean Heart Journalに発表された。
この結果は“若年者”へ生体弁が多用されることに警告を鳴らす。
本研究では、1997年から2013年の間に、スウェーデンにおいて単独大動脈弁置換術(AVR)の初回治療を受けた50~69歳のすべての患者を対象とした。
コホート全体の4,545例のうち、60%に機械弁が使用され、40%に生体弁が使用された。
平均年齢はそれぞれ59.9歳と63.7歳であった。
傾向スコアを一致させた計2,198例の患者において、機械弁が使用された患者の長期生存率は生体弁の患者と比べ、34%優れていた。
多変量解析で調整されたコホート全体の解析においても、機械弁の患者は生体弁の患者より長期生存率が30%高かった。
1997~2005年に手術を受け、傾向スコアを一致させた824例の患者の解析においても、コホート全体の解析と類似の結果であり、生体弁が使用された患者の年齢調整死亡率は41%高かった。
傾向スコアを一致させた患者ペアの解析において、試験開始時に50~59歳であった患者では、生体弁使用群より、機械弁使用群で生存率が有意に高かった。
しかし、60~69歳の群では、そのような機械弁の優位性は認められなかった。
両群において脳卒中の発症率に差はなかった。
それに対して、大動脈弁の再手術のリスクは、機械弁使用群と比較し、生体弁使用群で2倍以上高かった。
一方、同様のフォローアップ期間中において、重大な出血は、生体弁(4.9%)に比べて、機械弁(9.6%)でより高かった。
また、術後の重大な出血イベントのリスクも、機械弁使用群で約50%高かった。
機械弁は非常に長い耐久性を持ち、実質的に永久に使用できる。
したがって若年患者では第1選択となる。
ただし、機械弁は生涯にわたり、抗凝固療法を必要とするものである。
一方、生体弁や組織弁は耐久性に限界があるので、高齢者に適している。
「スウェーデンでは、抗凝固療法の質が高いので、このことが機械弁の患者の臨床成績に有利な影響を与えているかもしれない。しかし、この知見は、スウェーデンと同程度の医療水準の国の患者へも当てはめることができると考えている」と報告者はコメントしている。