阪神タイガース18年ぶり優勝の今年、28歳で生涯を終えた元選手がいる。鹿児島県出身で元阪神外野手の横田慎太郎さん--7月18日、脳腫瘍のため亡くなった。28歳であった。--
◆横田さん 引退セレモニー
2019年、脳腫瘍の後遺症で視界がぼやけるなか引退試合で見せたプレーは「奇跡のバックホーム」と呼ばれ、多くの人に感動をもたらした。
それは、9月26日の2軍ソフトバンク戦(鳴尾浜)で起きた。8回2死二塁から中堅の守備に就き、中前への安打の打球をワンバウンドで捕球すると、本塁へレーザービーム。ノーバウンド送球で本塁突入した二塁走者を刺した。約3年半ぶりの公式戦、最後の試合で最高のプレーを見せた。
横田慎太郎さんは、「練習でもああいうボールはいったことないんです。本当に神様がいてくれたからだと思います。諦めずにやってきてよかった。打球は二重に見えていて、どこで跳ねているかも分からなくて」と語っている。苦しいリハビリの乗り越えた先の奇跡のプレーだった。
◆
--本文 144ページより
元阪神タイガースの先輩選手だった鳥谷敬さんが、奇跡のバーックホームの後で、
「横田、野球の神様って、本当にいるんだな」
と声をかけでくださったそうですが、その神様の存在を感じることができるのも、努力に努力を重ねた一流の選手だからこそと、私(母)は思います。
そして、それは野球だけに限ったことでは、もちろんありません。
いろんな場所に、仕事に、それぞれの神様がいて、そこで働いたり努力している人たちのことをいつも見ていて、そっと背中を押してくださる。そんな存在がいると私は思います。そして、あのプレーを見て、感動したり、自分も頑張ろうと思ってくださった多くの方がいたことが、慎太郎にとって何よりの幸せだったのです。
--本文 246ページより
『18時のプレイボールの前に黙禱が捧げられました。
慎太郎が大好きな球団の皆さんと、そして4万人を超える観客の皆さんが、
慎太郎のために頭を垂れてくださいました。
「黙禱」
しんと静まり返ったスタジアムに風の音だけが響いています。
慎太郎、これが本物の甲子園の風だね。
慎太郎、今この瞬間、甲子園はあなただけのものだよ。
慎太郎、今、どこにいる?』
【目次】
プロローグ 甲子園の空
第一章 夢のグラウンド
第二章 奇跡のバックホーム
第三章 最後の港で
エピローグ ホームランボール
◆横田慎太郎(よこた・しんたろう)1995年(平7)6月9日生まれ。鹿児島県出身。鹿児島実から13年ドラフト2位で阪神入団。3年目の16年3月25日、開幕の中日戦に「2番中堅」で先発し、1軍初出場。17年2月に脳腫瘍が判明し、18年から育成契約。19年9月22日に引退を発表し、同26日の2軍ソフトバンク戦(鳴尾浜)で引退試合を行った。父の真之氏はロッテなどに在籍した元外野手。