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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:読んだ! 読みたい!
心はワクワク、体はボロボロのまるまる茸。給食センターでの勤務は、激務だ。あっという間に午前中が過ぎる。昼ご飯をそそくさと食べ、残りの休憩時間に横になり、その後の仕事であっという間に午後が過ぎる。
まだまだ体が慣れず、あちこちの筋肉が悲鳴をあげている。毎晩、お風呂で足や腕をもみほぐし、できた豆を宥めながら、泥のように眠ってしまう。それでも、仕事はどんなことでも新鮮で、早く覚えようと無我夢中である。先輩たちも親切に根気よく、指導してくれるし、早くも雰囲気には馴染んできている。我ながら順応性があるものだと感心している(^^) 新しい職場に移って10日が過ぎた。やっといつもの生活のペースを取り戻しつつある。PCの前に坐り、あれこれと考えられるようになってきた☆ ======================================== 私は時代小説のファンである。時代劇も大好きだ。「水戸黄門」「鬼平犯科帳」「半七捕物帳」「銭形平次」「剣客商売」などの定番はもちろん、映画、大河や単発ドラマなどビデオに撮っても観ている。特に江戸時代のものは、人々の生活や習慣、町並みなど、とても心が惹かれる。私は前世が江戸時代の町民であったかもしれないな。いやいやお姫様だったかも...(^^;) 映画やTVで映像で楽しむのも悪くはないが、やはり小説がおもしろい。主人公をはじめとして、登場人物が実に生き生きと描かれていて、想像力に乏しい私でも、すっかりのめり込んでしまう。 しかし、読んでいて「?」と思うことがある。当時の地理が全くわからないのだ。 【長谷川平蔵は江戸城の西面を赤坂へ出て増上寺をすぎ、赤羽橋へ出た。役宅から、二本榎までは二里ほどである。三田の通りから聖坂をのぼりきったところで...】≪池波正太郎「鬼平犯科帳九」より≫ こんな記述があると、ふぅとため息が出る。赤坂、増上寺、三田など、現代でも使われている地名を頭の中の東京の地図と照らし合わせてみる。と言っても、こちらの記憶も全くあてにはならない。年に1、2度遊びに行くだけの東京だ。うろ覚えよりもひどい記憶で、だいたいあの辺かなぁ...なんていう有様だ。 小説に登場する侍や町人たちは、実に活き活きと江戸の町を歩き廻っているのに、私は置いてきぼりをされたような思いになる。あまりに淋しいので、江戸の切絵図を買い込んだ。 『幕末人物・事件散歩』(人文社)と『大江戸ぶらり切絵図散歩』(PHP研究所)。 『大江戸ぶらり切絵図散歩』の一冊は、時代小説のヒーローたちの足跡をたどるガイドブック的なものだ。江戸の地図の上に、現代の地図が重ねてある。300年以上前の江戸と、21世紀の東京が一目瞭然だ。今の有楽町マリオンの辺りには、江戸時代南町奉行所があり大岡越前が、そしてJR東京駅八重洲北口辺りには、北町奉行所があり遠山金四郎が、それぞれ辣腕をふるっていた。両国橋では、二本差の武士や商家の小僧、大工道具を担いだ職人たちが行き交っていたのだろう。黄八丈に前掛けをつけた娘が、いらっしゃいと笑顔を見せる茶店や、柳が揺れている掘りの上を滑るように進む猪牙舟(ちょきぶね)や、駕籠に揺られるどこぞのお嬢様や、風呂敷を抱え足早に行く手代などが、血の通った人間として私の頭の中に現れる。 地理がわかっただけで、こんなにも違うものかと驚かされる。口入れ屋の暖簾を翻す風、だんごの甘い匂い、常磐津の三味線の音、火事を知らせる半鐘など、まるでその場にいるように五感が刺激されるのだ。 もう一冊『幕末人物・事件散歩』は、安政の大獄、桜田門外の変などの事件が続き、開国派・攘夷派の対立がエスカレートしていった幕末、一般庶民までをも巻き込み、時代の流れに翻弄されていた当時の切絵図だ。幕末・維新の事件やそれに関係した人物などが、地図上に散見している。遠山金四郎の自宅、新撰組沖田総司が息をひきとった植木屋平五郎宅、原田左之助が死を迎えた本所深川の神保山城守屋敷、坂本竜馬・清川八郎などが腕を磨いた千葉周作道場「玄武館」、勝海舟と西郷隆盛が会見した薩摩蔵屋敷、長谷川平蔵の役宅、「赤髭」の舞台となった小石川養生所などなど、興味は尽きない。 280年余の天下泰平の世の中で、のんびりとしかし活発に真剣に生きた人々がそこにいた。幕末の動乱の中、右往左往しながらも、必死に日本の行く末を考えた人物たちがそこに、確かに息をしていたのだ。 時代小説を読む上での参考にと買った切絵図は、独立した書物として、私の愛読書になった。この色彩豊かな地図を眺めながら、私はすっかりお江戸の人間と化す。女密偵となり鬼平に仕え、太夫となって吉原で花を咲かせ、大店の内儀となって店を切り盛りし、長屋のおっかさんとなって一心太助の魚を大声で値切っているのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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