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2005年04月19日
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カテゴリ:酒処「和酌和酌」
日本人は桜が好きだ。御多分にもれず、私も好きだ。桜前線が発表される時期になると、なぜか心が浮き浮きとし、今日はどこで開花したのかしら、この辺はあとどれくらいで咲くのかしらと気になる。花見酒が楽しみということはもちろんだが、それだけではない何かが、心を浮きたたせる。日本人に流れる血というかDNAというか、生まれたばかりの赤ちゃんでさえも、桜を見ると喜ぶんじゃないかというような感覚だ。

世界広しといえども、桜の下で宴を催し、お酒を飲んだり弁当を食べたりするのは、たぶん日本人だけだろう。どうして日本人は桜に惹かれ、花見をするのか?
「さくら」の語源を調べてみた。元々は「桜」という言葉ではなく、「さ」と「くら」が合わさったものらしい。大昔には、山の神を「サ神」と呼んだそうだ。「くら」とは「座」と書いて、神霊が依り座する場所という意味。「さ」の神が「座」する所という解釈だろうか。
神様にはお神酒がつきもの。「サ神」様が「座」するのだから、自然とお酒を供える風習ができてきて、それのみでは物足らず、「サ神」様にみていただくために、歌や舞いを披露したという。これが「花見」の原点ではないだろうか。

もっとも、この時代は農事の儀式として行っていたようだから、現代のような「花見」を当時の人が見たら、どう思われることやらわからないが...
山の神である「サ神」様は、農事の神様でもあり、田植の時期には山から降りてきていただいたそうだ。田植の季節である「五月」を「さつき」というのも、「サ神」様の「月」と考えれば、納得である。

古代では、桜といえば山桜を指す。奈良時代になって、あちらこちらに植樹されるようになったらしい。平安時代になると貴族たちの間で邸内に桜を植えるのが流行し、「左近の桜」は有名。室町時代の足利氏の頃には、秋の紅葉狩りと並び春の桜狩りが日本独特の行楽行事となっていったようである。その後戦国時代を経ての、豊臣秀吉が催した「醍醐の花見」はあまりにも有名である。江戸時代になると、花見は一般庶民の間にも広まり、最大の娯楽として親しまれていたようだ。楽しみが少なかった当時、女性は晴れ着を着て、前日から用意した弁当を持ってくりだして行くレクリエーションだったのだろう。

というわけで、私も先週の日曜日、天気は上々、春の陽射しに誘われて花見に出掛けた。友人のいる群馬県沼田市・沼田公園。沼田城の跡を公園にした所で、ソメイヨシノを中心に約250本の桜の木が、今を盛りと咲き誇っていた。ここには樹齢400年を越える「御殿桜」があり、城の名残を留める本丸石垣跡にしっかり根をはっている。正面からも素晴らしいが、反対側へまわれば、石垣の下からこの桜を見上げることになり、大きく広げた枝に、満開の花をつけたこの老木の堂々とした姿に圧倒される。夜、この桜を仰ぎ、花の間から月がのぞめる様は、風流でもあり、江戸時代沼田城主であったお殿様も、この絵のような景色を見ていたのかと思うと、沼田城の天守までも浮かびあがってくるような錯覚にとらわれる。上杉氏、北条氏、武田氏などの戦国大名によって争奪を繰り返された時代や、真田氏による支配を経た後、沼田藩は失政などを理由に改易されてしまったが、真田氏2代城主であった信吉が鋳造させた城鐘を下げた鐘楼が復元されている。

友人の用意してくれた八海山を飲みながら、ほろほろと酔いがまわっていく気持ちよさはなんとも言えない。またもや、タイムマシーンで空間を抜け、お殿様のお側めにでもなったような気分で、花びらの浮いたお酒と半月の輝きに、心うばわれるのだった。

【花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ】 杉田久女
【生涯を恋にかけたる桜かな】   鈴木真砂女





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最終更新日  2005年04月20日 01時14分37秒
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