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カテゴリ:仕事の話
のぞみ○○号、東京行き。
車内は比較的空いている。 新神戸駅を出てから、随分時間が経っているのに、 いつもならウトウトしているはずなのに、 今日はどうもダメみたいだ。 何度目を閉じようとしても『緊張』の二文字が まるで私の意識を支配しているかのよう。 まどろみの世界への道は断たれている。 何故こんなに神経質になるのだろう? 何故『どうにかなるさ!』と笑い飛ばせないのだろう? 通訳の場は何度も踏んでいるはずなのに、 毎回必ず不安になってしまう。 私が欲しいもの。 それは、自信ではない。 そんな主観的なものは、いらない。 むしろ、今手に入れたいのは・・・ 車掌の声で、我に返る。 『ご乗車の皆様、左手に見えますのは・・・』 アナウンスに促され、窓の外に目をやると・・・ そこには、日の光を浴びた日本一の山。 最も高いから、日本一なのだろうか。 最も麗しいから、日本一なのだろうか。 私は、何度も新幹線でここを通っている。 そして、何度もこの山を見ている。 しかし、これほど富士山に心動かされたことは、今までない。 空気が澄んでいるからだろうか。 遠くにあるはずなのに、手を伸ばせば届きそう。 青い空を背景に、山の輪郭がくっきりとした線として浮かんでいる。 山頂に積もっている雪さえも、その結晶の一つ一つが見えそうだ。 こんなにはっきりと富士山を見たのは、 こんなに美しい山だと感じたのは、 これが初めてだ。 私が欲しいもの。 それは、これなのかもしれない。 勝手な解釈かもしれないけど、 もしかしてこれは・・・ 吉兆。 神様が、『大丈夫』と言っている。 この日本一の山を通して。 今まで見たことないほど見事な富士山の姿を通して。 その時、私の心に新たな感情が。 『よし!この仕事、難なくこなせる!』 確信。 私が欲しかったもの・・・ * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 帰りの新幹線。 車内はほぼ満席で、騒がしい。 しかし、一人だけ座席に深く座り、ぐっすりと眠る者が・・・ 目にも耳にも、何も入ってこない。 私は、夢さえも見れないほどの深い眠りに。 しかし、無意識の中でも、その口元は緩んでいたのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年01月26日 19時17分21秒
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