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私は、小説が書けない

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カテゴリ:面白おかしい話
今朝、父親が血相を変えて、出かけて行った。
小脇に、電子辞書を抱え、
「信じられへん!なんでやねん!」とブツブツ言いながら・・・

父親は、かなり前から英語学習を続けている。
しかも、独学で。
スクールになど一度も通ったことはない。
趣味として始めたのだが、今では英字新聞や小説なども
スラスラと読めるように。
会話は、やはり無理みたいだけど。

この電子辞書は、私が昨年の夏にプレゼントしたもの。
それまで分からない単語を一々辞書で引いていた父親は、
「これは、便利や!」と大喜び。
以来、それは彼にとって大切な宝物となった。

なんであんなに慌てているのだろう?
少し気になったが、私はいつものように仕事場へ(自宅の1階)。

その1時間くらい後だろうか、誰かがドアをノックした。
戻って来た父親だ。
先ほどの動揺していた様子は微塵もなく、むしろ満足気。
手には、電子辞書。
私がプレゼントしたのと同じメーカーのもので、
同一の機種だが、こちらは新品。

話をまとめると、つまりこうだ:
少しの間忙しい日々が続いた父親は、1週間ぶりに英語学習を再開した。
電子辞書をいつものようにONにすると、液晶には見慣れない黒いシミが。
前にはこんなのなかったぞ、と思いそのまま使うも
表示される単語にそのシミが覆いかぶさっていて見苦しかったとか。
保証書はきちんと保管していたし、運よくまだ保証期間内だったので
電機屋さんへ行くことにしたそうだ。

「文句言ってやってん」と、父親。
1年も経っていないのに、常に机の上に置いているだけなのに、
しかも落としたことなんて一度もないのに、
なぜ液晶がこのようになったのか?
この現象は、おかしいのではないか?
これは、欠陥品ではないか?・・・と店の人に伝えたそうだ。

電機屋の店員は、父親の言い分に納得。
というか、反論の余地がない。
現に、商品がそのような不可解な状態になっているのだから。
幸運なことに、ちょうどまったく同じ電子辞書が店頭にあったので
早速交換してもらえたのだ。

「あ~良かった!これで一件落着や~」と言いながら、
2階の自室へ戻った父親。
その後ろ姿を見送りながら、心の中でつぶやいた:

私は、犯人を知っている・・・

そいつは、物をよく壊す。
携帯にリモコン、ビデオデッキにパソコン。
そいつの手によって、天寿をまっとうできなかった物は数えきれない。
被害に遭うのは特に、電化製品が多い。
とにかく、そいつは乱暴なのだ。
知人の間では、“破壊魔王”とまで呼ばれている。

犯人は・・・

っと、その前に。
そいつの1週間前の行動について語らねば・・・

ちょうど先週あたり、犯人は仕事のため出かける支度をしていた。
忘れ物はないか?と、持ち物チェックをしている最中、
ふと自分の電子辞書を開いたのだ。
が、しかし。
画面、真っ黒。液晶が完全にイカれていた。

電子辞書というものは、案外デリケート。
落としたり、ぶつけたりするとすぐに液晶がダメになる。
だから携帯する場合、ソフトケースに入れなければならない。
これが、鉄則だ。

なのに、そいつ。
何度も落としていた。
そして、何度もケースなしのままカバンに突っ込んでいた。
だから、自分の電子辞書が壊れてしまったのも無理はない。

そいつの脳裏には一瞬、「持って行かなくてもいいかな?」との考えがよぎった。
そもそも犯人の仕事である通訳では、本番中に辞書を開く余裕なんてない。
ただ、「持って行かないと格好がつかない、万が一ってこともあるし」と思い、
やはり持って行くことにしたのだった。

ということで、父親の部屋にこっそりと忍び込んだ犯人は、
電子辞書を拝借した。勝手に、許可なく。
しかも、あろうことか、ポ~ンとカバンに放り込んだ。
ケースなし、裸のままで。

学ばないヤツだ!ほとほと呆れてしまう。
一体、何度同じことを繰り返せば気が済むのだろう。
しかも、「通訳先で落としてしまったかもしれない」と
今になって言い出しているではないか!

本当に、けしからんヤツだ!
その上、今度は人のものまで壊しやがって!
何もなかったように元の場所に戻しやがって!
それに、電機屋さんはどうなる?
いわれなき罪を着せられて、可哀想ではないか。

私は、犯人を知っている・・・
よ~く知っている・・・

そいつの名は・・・

(もうお分かりでしょ?笑)





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最終更新日  2006年02月07日 23時28分35秒
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