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私は、小説が書けない

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6月26日の日記、思いがけない再会の話。
約束通り、今日のお昼は、あの美人秘書さんとランチに行った。
ちなみに、私の勘違いで“社長秘書”って書いたけど、
“副社長秘書”なんだって。ま、どちらにせよ、カッコイイことには間違いなしよね。

さて、美人秘書さんは、「お口に合うかしら?」と、
お気に入りのところに連れてってくれた。
そこは、会社の近くにあるカフェで、テーマは“アジアン・スタイル”。
実は私、エスニック系がかなり苦手。
「ゲゲェ~!」と、思ったのだが、一歩中に入ると、
内装はとてもオシャレで、肝心のフードもそれほど悪くなかった。

それよりも、私達が2年以上音信不通だったなんて、ウソみたい。
まるでずっと親しくしていたかのように、話に花が咲いたのだった。
このように、“縁”というものは、“空白の時”をごく自然に埋めてくれるのだろう。

彼女は、言った:
この会社で働き出して半年になるけど、まだまだ分からないことが多い。
でも、仕事自体は辛くない。それに、月に一度は必ず、
副社長に同行して、海外出張にも行っているのだ。

私が、「それって、傍から見ると、“不倫旅行”っぽいよね?」と冗談を飛ばすと、
彼女は笑いながら、こう答えた:
「確かに現地ではずっと一緒に行動するけど、機内では全然別の席なの。
そこらへんをちゃんと配慮してくれる人だから、安心できる。」
この副社長は完璧主義で、マジメ過ぎるとこもあるけど、
だからこそ、セクハラなど心配しなくても良い相手なので楽なのだとか。

ということで、今のところ、この生活に満足してるとのこと。

さらに・・・

彼女は、ここに転職してからすぐの頃、歯の調子が悪くなったので、
会社近くにある歯科医院に通ったそうだ。それは、今年の2月中旬の話。
そして今、その歯医者さんと、結婚を前提に付き合っているのだ!
ウェディング・ベルが鳴るのは、おそらく来年、桜が咲く頃だそうだ。

3日前。
彼女とランチの約束をした時、私にはどうしても聞きたいことがあった。
場合によると、それは“夢を諦めた”という類の話を
耳にすることになる可能性も、無きにしもあらずだった。
それでも、私は確かめたかったのだ。

しかし、今日。
最後まで、その疑問は私の口を伝うことはなかった。
なぜなら、そんなこと、どうでも良くなったからだ。
こんなに嬉しそうに今の自分を語る彼女を見ているだけで、十分だった。

これは、“諦める”、“諦めない”の話ではない。
彼女は、この会社に来るべき人だったのだ。
でなければ、ある種の“女性の憧れ”の職に就くこともなかったし、
何よりも、“運命の出会い”をすることもなかったのだ!

「私の彼ね、ハンサムじゃないの。でも、とても良い人なのよ。」
そう言うと、彼女は私に一枚の写真を手渡した。

そこには、実に優しそうで包容力のありそうな男性に寄り添い、
最高の微笑みを浮かべる彼女の姿があった・・・






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最終更新日  2006年06月29日 21時48分19秒
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