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私は、小説が書けない

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カテゴリ:仕事の話

東京での出張通訳も無事に終わり、土曜に神戸へ帰ってきました・・・

仕事内容は、アメリカ人メイクアップ・アーティストの通訳。
依頼先は、某海外化粧品会社で、女性の方ならきっと、「あ~、知ってる!」ってブランド。
実は1年くらい前に、大阪でメイクアップショー開催の時に
ご一緒させて頂いたので、これが2回目となる。

今回はショーではなく、某デパートにて、VIPのお客様向けに
アーティストがメイク・サービスを行った。
その際、会話を円滑に進めるために、私が通訳をしたのだ。

この度、仕事をお手伝いしたメイクアップ・アーティストは、R氏という。
この会社グループでも世界に3名しかいない“プレミア”の称号を持つスゴイ方。
なんと、私が生まれた年には、もう既にこの業界で活躍していたとか!?

「偉そうにされても仕方ないよなぁ」と思い、本番に挑んだのだが・・・

R氏のルックスは、非常にジローラモさん似。
そう、雑誌“LEON”やTVCMでおなじみの“ちょいワルおやじ”のね。
しかし中身は、“ちょいワル”どころか、“超素敵なジェントルマン”!
例えば、お手洗いに同時に行った時、絶対に女性の方が時間がかかるので、
「先に現場に戻っててください」と言っても、必ず待っていてくれるのだ。
「すみません・・・」と謝ると、「レディーを待つのは、楽しいことなのですよ」
ってクサイ台詞を、自然にサラッと言える人なのだ。

勿論、R氏はお客様に対しても、その姿勢を貫き通していた。
ちなみに、このブランド。美容液だけでも1本1万円もするので、
基礎化粧品からすべて揃えると、かなりの額になる。
だから必然的に、VIPのお客様はリッチなマダムばかり。
しかし、そのような女性たちも皆、彼の紳士的態度にメロメロになっていた。

R氏は、言った:
「“若さ”は“可愛らしさ”だが、決して“美しさ”だとは限らない。
なぜなら、“美しさ”というものは、年齢を重ねなければ、手に入らないものだから。」

さらに、こうも述べた:
「僕は、中年女性のお化粧をするのが一番好きなのです。
口紅の色を変えるだけでも、彼女たちが自分の内に
秘められている“美しさ”に気付くことができる。」

実際、お化粧をしてもらい、その出来栄えを鏡で見たマダム達は皆、
“嬉しさ”と共に、“驚き”の表情もしていた。
「私、こんなに綺麗だった?」と感動を口にする人もいれば、
感極まって目を潤ませる人もいた。
しかし、カウンターを後にする際には誰もが、「ありがとうございました」と
最高の笑顔を浮かべ、帰って行った。
その一人一人は、顔の作りも、背格好も異なるのだけれど、実に綺麗に思えた。
自分に満足し、“笑う”ということが、人をここまで美しくするものか、と
私自身感銘を受け、心を打たれたのだった。

R氏が語ったことで、とても心に残る言葉がある:
「僕の仕事はメイクを施すことではない。
むしろ、“女性を笑顔にさせる”ことに重要性を見出しています。
メイクは、それを引き出す道具にしかすぎません。」

R氏は、本当の意味でのプロかもしれない。
いや、確かにそうだと断言できる。
なぜなら、自らのスキルを、それも世界的に認められている技術を
「道具にしかすぎない」と言い切れるのだから。

本物のプロたる者は、自分が如何に良い仕事をしたということに重きを置かない。
むしろ、相手にどのような印象を与えることができたか?
相手からどのような感情を引き出すことができたか?
つまり、“主観性”ではなく、“客観性”を常に意識しているのだろう。
そして何よりも、相手を笑顔にすることを一番大切にしている。

私は職種も違うし、当たり前の話だが、年季やキャリアも、R氏とは比べ物にならない。
だが、今回の仕事を通して、とても貴重なレッスンを学べたと強く思う。

今月の後半にもまた、出張通訳が控えている。
次なる場所は、札幌。
しかし、今度はいつもとは違う視点で自分の仕事を見つめよう。
「如何に上手く通訳できたか」ではなく、むしろ「如何に相手に喜んでもらえたか」だ。

これからは、“人を笑顔にする通訳者”を目指し、
少しずつだけど、R氏のような本物のプロになろう!と、
新たな決意を強めた私が今、ここにいる・・・






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最終更新日  2006年08月02日 21時22分28秒
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