私の仕事場はとても殺風景。でも、がらんとした何の味気もない空間に、一つの額が飾ってあります。その中には、目をまぶしそうに細める可愛い子羊の写真。そして、そこにはある詩が載っています。
谷川俊太郎さんの「生きる」という詩。
日本語には、「忙しさにかまける」というよく使われている表現があります。しかし、「忙しい」という字は、ご存知のように、「心を忘れる」と書く。私はこれまで何度も、忙しさにかまけて、心を忘れてしまいそうになったことがありました。「忙しいから・・・」と、それをイイワケに、逃げてしまったこともあるかも。
でも、それは。もう過去の話(と思う)。
今、思うこと。忙しかろうが、そうでなかろうが。一瞬一瞬を大切に生きていきたい。だって、この一瞬はもう二度と戻ってこないのだから!朝、目が覚めて、息をしていること、ベッドから起き上がれること、顔を洗って気持ちいいと思えること、朝食が美味しく食べられること・・・そのような何気ないことができるということ。これが、「生きている」ことの証。数えてみれば、たった一日の中にでも「生きていることの喜び」を感じられる瞬間がてんこ盛り。
「生きる」とは、私にそういうことを教えてくれた詩です。その素敵なメッセージは、読むたびにジワ~ッと胸に染み渡る。忙しさにかまけそうになる時、心を忘れそうになる時。そういった時には、必ず読むようにしています。
今日は、全文ご紹介しますね。ちょっと長いけど、お時間があれば是非お読みくだされ!(あなたは、どんなメッセージを受け取りましたか?)
「生きる」
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
(「うつむく青年」より サンリオ出版・1971年)