奇跡はどこまで続くのか
1月25日、ホッフェンハイムが新スタジアムとなるライン・ネッカー・アレーナのお披露目を行った。1年5ヶ月を経て完成したスタジアムの落成式にはオーナーのディトマール・ホップをはじめ多数の支援者が集まった。その中でホップはこう挨拶した。「今日はクラブの歴史上で偉大な1日になった。 この素晴らしいスタジアムを誇りに思い、完成をとても嬉しく思っている。 私の夢はクラブの奇跡がこのスタジアムでも続いてくれることだ。 そして今後も長い間、このスタジアムでブンデスリーガの試合を見れると願っている」少年時代にホッフェンハイムでのプレー経験もあるホップは、32歳のときに興したソフトウェア会社が当たり億万長者になった。その後企業の一線から退いた際に「地元に恩返しがしたい」と病院や学校に援助をするようになり、ホッフェンハイムへの支援もその1つだった。だが最初はボール代だけだったのが、徐々にサッカークラブの経営にのめりこんでいき、ついにはクラブを買い取り、ブンデスリーガへの挑戦を目指すことになった。会社を興し成功させた実績は、サッカークラブでも同じであった。優秀なスタッフを揃えると同時に若手育成のための下部組織の強化も怠らず、クラブの顔ともいうべき監督には“教授”のニックネームで通るラングニックを招聘するなど、明確なビジョンと長期的なスパンでのクラブ強化は次第に実を結んでいった。結果、20年前には8部リーグに所属していたホッフェンハイムは今シーズン、見事にブンデスリーガ昇格を果たすことに成功した。ホッフェンハイムの基本戦術はゾーンプレスによる全員守備、そしてボールを奪った後の素早いカウンターである。だがこのカウンターのスピードが半端ではない。バイエルンさえも手を焼くスピードは、ラングニックの教えを選手全員が共通認識し、お互いがお互いを知り尽くしているからこそ噛み合っているものだと言えるだろう。1試合平均2,47得点はもちろんながら、下位との対決を8勝1分で終えたこと、つまり取りこぼしなく勝つべきチームに確実に勝ったことが、前半戦を首位で折り返した最大の要因ではないだろうか。皮肉屋は「強豪チームの不甲斐無さに助けられた」「(得点源の)イビセビッチの離脱(今シーズン絶望)で成績も下がるだろう」と出る杭を打とうとするが、例えそれが正しい意見でも個人的には異を唱えたい。ウィンターブレイクが明けた最初の試合。新スタジアムにコトブスを迎えた一戦は、イビセビッチの代役を期待しローンで獲得したサノゴの得点もあり、2対0で勝利を収めた。シーズンは後半戦が始まったばかりだが、カウンターのスピードのごとく勢いを持続したまま最後まで走りきるホッフェンハイムを見てみたいのはぼくだけではないはずだ。ホッフェンハイムの奇跡が続くことを願ってやまない。ほな、また。