アルシャビンの去就はいかに
スペインの優勝で幕を閉じたユーロ。熱望されたニュースター候補は軒並み不振であったが、その中で唯一と言っていい活躍を示したのがロシア代表FWアルシャビンである。グループリーグ1、2戦が出場停止だったにも関わらず代表に召集され、満を持して望んだ3戦目のスウェーデン戦からの活躍はそのままロシア代表の躍進と重なり、1988年大会以来の準決勝進出に大きく貢献した。これによって、現在アルシャビンの所属するゼニトには多くの照会やオファーが届いているようだ。初めに噂に挙がったのはバルセロナ。ロナウジーニョやエトーといった旧主力へ戦力外通告を行っていたことで、攻撃陣の補強は急務であったはずだ。新監督に就任したグアルディオラは軸をアンリと考えているようで、「アンリやボージャンがいるだけで十分だ」とは語っているものの、メッシを含めたそれ以外の攻撃陣は手薄であり、ドスサントスさえも放出した今となっては後1~2人ほどの補強は考えていて当然であろう。またアルシャビン本人がバルセロナを希望していることからも移籍は時間の問題だと思われていた。しかしゼニトはこれを拒否した。理由は移籍金の低さ。約50億円を希望するゼニトに対し、バルセロナが提示した金額はその半分の約25億円。ゼニトからすればお話にならない金額だったのではないだろうか。次にアルシャビンに対しアプローチをかけたのがアーセナル。中心選手であるアデバイヨールの移籍の噂が絶えない中で、また今シーズンこそ覇権奪還を目論むヴェンゲルにとって前線の補強はフラミニの穴と同様に至上命題でもある。そのアーセナルが提示した移籍金は約40億円。しかしゼニトはこれさえも拒否した。ゼニトはアルシャビンを売るつもりはないのだろうか。決してそんなことはないはずだ。クラブとしてはおそらく今が売り時だと考えているはずだ。ここを逃せば今以上の移籍金を望めるべくもないことは分かっているはずだ。そして何よりアルシャビン自身が海外クラブでのプレー希望を公言しており、ゼニトを離れたいことを公にしているのだから、おそらくは今夏中の移籍は間違いないと見ていいだろう(この辺りはロナウドの件と違い、中堅国・クラブの悲しい性である)。ではゼニトの思惑は一体どこにあるのか。当然ながらマネーゲームを触発させることだ。彼らは本当に50億もの大金を得ようとは考えていないだろう。もらえるに越したことはないが、これはあくまでアルシャビンを安売りしないというクラブからのブラフである。どこの世界にも存在する交渉の常套手段である。そして最初から交渉に入るのではなくまずは拒否することで、相手の出方を窺っているのである。ここで全ての相手が引いてしまうリスクもあるが、そこは旬の選手。相手が引かない自信があるのだろう。そして最初より上積みされたオファーが届くのを待っているのであろう。そこで初めて交渉のテーブルに付き、1円でも多くの移籍金を得るための交渉をスタートさせるのである。アルシャビンの代理人であるラヒター氏はこうコメントしている。「彼(アルシャビン)がビッグクラブに加わるのを楽観的に考えている。 いつ決まるかは分からないが、8月末まで時間は十分にある。 それまでゆっくり見るよ」アルシャビンの移籍は間違いないだろう。だがその移籍先はすぐには決まらないだろう。そして移籍金も多くて30億前後に落ち着くのではと考えている。ほな、また。