御馴染みの光景。
髪切りにいってきた。いつも行く店の人の実家が宮城という話を以前に聞いていたが、どうやら一番揺れの強烈だった地方らしい。さいわい実家は内陸で地盤が頑丈だったのか、それとも高台だったのかわからんけれど、津波に呑まれる事もなく、家もご両親も無事だったそうで。揺れ始めたとき、心配になって実家に電話したら電話は繋がったそうだが、電話に出たお母さんが「この揺れじゃ多分断水になる!!今、風呂や家中の空容器集めて水溜めしてて忙しいの!!そんなわけだから切るよ!!」・・・と、電話を切られてしまったと、お店の人は苦笑いしつつ言った。そういや、私にはあの時「断水」の発想はなかったなぁと、話を聞きながら思った。断水の経験が殆ど無いからか。ガソリンが手に入るようになってから実家に行ったそうだが、途中目にした風景は「凄かった」の一言に尽きるそうで。「地震の被害が無かった地方の人は、どう感じるんでしょうねぇ」と、お店の人は何とはなしに言った。うーん。難しい問いかけだ。私は携帯のワンセグで地震が起きた直後の様子を観ていた。地震時の東北のリレー中継では御馴染みの港、大船渡や石巻等。「津波警報発令時の御馴染みの光景」。静かな波と少しだけ揺れる船。呑気に飛ぶ海鳥の群れ。潮位に変化なし。またこのパターンか。だから私はワンセグを切った。揺れは酷かったが大した被害はなさげ。しかし次につけた時、そこに映っていたのは、たしか名取の、家や田畑を巻き込みながら疾走するドス黒い波。ちょっと待て。さっきの「御馴染みの光景」はどこへ行った。大船渡や石巻、塩釜その他、私がいつも何気に観ていたTVの中のあの風景はどこへ行った。今TVが映す光景と私が知っている光景が、まだ重ならない。ギャップがあり過ぎて、頭が上手い事処理してくれない。そんな感じがする。