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エルファの独り言

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ウォロー放浪記 ウォロー1056さん
Jun 23, 2006
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カテゴリ:クロノス小説
 カイヌゥス地方。

 ここは遥か昔に起こった英雄たちの戦争の爪痕が、今も色濃く残る地域の一つ。

 その瘴気は今なお草木を枯らせ、この一帯を「不浄の大地」と呼ばせるほどに。

 人の往来など皆無に等しいこの場所で二人組みが狩りをしていた。

「相変わらず寂しい場所っすねぃ……」

 聖騎士の漏らしたつぶやきに

「『不浄の大地』にわざわざやってくる物好きはいないんじゃないかしら?」

 女魔術師がそう切り返した。

「それはそうなんすけどねぃ……」

 聖騎士は「はぁ……」とため息を漏らして、

「美姫っちはともかくとして、マスターはなんで見習いのオイラなんかをこんなところによこしたんっすかねぇ」
と、ぼやいて美姫っちを見ると、彼女はジト目で彼の方を見ている。

「あら……レディに対して『ともかく』って言い方はないんじゃないの?グロさん」

「あ! いやその……そんなつもりで言ったんじゃないっすよ」

 グロは美姫っちの視線の意味にようやく気付いて慌てて言い繕うものの、彼女はジト目で睨んだままだ。

「いや、だから……その……」

 ばつが悪いのか、なおも言い募ろうとするが、言葉になっていない。

(さすがに可哀想になってきたなぁ)

 そう思い、美姫っちはわずかに苦笑した。

「ふふ。冗談ですよ」

 その時だった。

 ひゅううう

 カイヌに吹くはずのない、凛として少し肌寒いような風が一陣吹き抜けた。

(!?)

 ふたりは風の吹いてきた方角を見ると、遠くに蒼穹の光が浮かんでいる。

「あの場所はアンテのいる方角っすねぃ」

「とにかく行ってみましょう!」

 ふたりはそう言って駆け出した。



「くっ! 力を使いすぎたか……」

 薄く漂う瘴気に眉をひそめて自分の状況を把握しようとする。

 とっさの機転でなんとか致命的な事態は避けることができたものの、お互いの術が妙な相互干渉を起こしたらしく、ふと気がつくと見知らぬ場所に放り出されてしまったようだ。

「あやつらときたら……まったく、やってくれる……」

(まさかあのような手段に打って出るとはのう……

 それに気付かぬわらわもわらわか……我ながらあきれを越えて笑ってしまうのう)

 自嘲の笑みが零れる。

 考え事をしていたせいか、その人物は背後に忍び寄る影に気付くのが致命的に遅れていたことにすら気付いていない。

 そして……



 ふたりがその場所に着いたのは、まさにこの時だった。

 見慣れない格好をした少女が、なにやら考え事をしている……のはいいとして、そのすぐ後ろでアンテクラが巨大な斧を振りかぶっていた。

「危ない!!」

 思わずグロが叫ぶ。



「危ない!!」

 叫び声に我に返ると、背後に殺気が生まれていることにようやく気付いた。

 振り返っている暇はないと直感し、そのまま前に跳ぶ。

 相手がアンテクラでなければ、あるいは消耗さえしていなければ、回避することができただろう……

 ドンッ!

 重い衝撃が背中を襲い、バランスを崩して地面に倒れる。

 そこに駆け寄ってくる二つの気配。

「狩場で考え事なんて、冒険者としての心構えがなってませんよ」

「すまんのう……状況が把握しきれてなくての」

 美姫っちの注意に謝った少女はヨロリと立ち上がる。

「そんなすぐに起き上がったら傷に障るっすよ」

「よい。致命傷でなければこの程度なら大した傷には入らぬ」

 少女はグロの心配をばっさりと切り捨てる。とはいえ背中に受けた傷は深くはないが、決して浅いものでもないことは誰が見ても明白ではある。

「けど……」

 グロはさらに言い募ろうとして気付いた。この少女が武器らしい武器を持っていないこと、戦闘に適した装備を何一つ身につけていないことに。

「ディード」

 少女がつぶやくと、右手に嵌めていたリングの宝石が禍々しい光を放つ。

 その光は闇へと転じ、右手にしばらくわだかまったと思うと、その手の先に闇の刃が現れた。

(なんっすかアレ!?)

 受ける印象としては成長武器『カーラ』に近い。

 しかし、カーラとは違う点が3つある。

 一つ目はカーラが両手の爪なのに対して、少女が持つ武器は片手。

 二つ目はその刃渡りが、カーラよりも若干長い。

 そしてもっとも大きな違いは光ではなく闇を纏った武器だということ。

(成長武器? いえ、闇を纏った成長なんて聞いたことないですし……)

 グロと美姫っちは小声で言い合っているが、少女はそれを無視してアンテクラに向き直る。

 そのあと何が起きたか、ふたりには全く解らなかった。

 まばたきするほどの一瞬の間にアンテクラはくずおれ、胴を真っ二つに両断されていた。

(っ!! 思っていたよりも……消耗していたということか……意識を……繋いで……おら……れ……ぬ……)

 少女の右手にわだかまっていた闇が消えたかと思うと、少女もその場に倒れてしまった。

「大丈夫ですか!?」

 美姫っちが慌てて駆け寄る。

「ど、どうなんすか?」

 グロの心配そうな声に

「気を失ってるだけのようです……とは言っても、決して浅い傷ではありません。

 ここじゃ満足のいく治療なんてできないですから、アジトに連れて行きましょ」

 美姫っちはきっぱりと決断すると、身の回りを片付けて帰還呪文書、通称帰スクを広げる。

 それを見たグロも慌ててあとを追うように帰スクを使った。



 これが彼らの出会い。そしてこれから綴られる冒険の始まり。


-to be Continued-





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Last updated  Jul 7, 2006 06:43:02 PM
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