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カテゴリ:クロノス小説
翌朝
クロノス城ギルドSSDアジト 「みなさんおきてください。 朝ですよ」 いつもとは違う鈴のような声で美姫っちは目を覚ました。 「ん~……おはようございます。エルさん」 眠気が残ったまま、起こした声の主エルファリアと挨拶を交わして…… 「えええええええっ!?」 美姫っちの驚いた声で全員が飛び起きるハメになった。 「ど、どうしたんっすか!?」 「~~なんだよこんな朝っぱらから大声出して……」 と口々に叩き起こされたことへの不満が漏れる。 「みなさん、おはようございます」 エルファリアはにこやかに挨拶をして、みんなは絶句した。 実は昨日の夜、エルファリアの怪我の具合が心配だからと、みんなで交代でついていることにしていたのだが、 どうやら疲れのせいで途中で寝てしまった……のはまあ置いとくとして…… 「エルさん?」 「動いてないと気が滅入っちゃいそうなので」 「なるほど……ってそーじゃなくて。 まだ寝てなきゃ……」 まだ半分寝ていた悲魔はエルファリアの言い分に納得しかけて、慌てて訂正を入れる。 「? わたしならもう平気ですよ?」 「平気って……そんなはずないっすよ」 背中に受けた傷を目の当たりにしていたグロと美姫っちは、信じられないという表情をした。 結局のところ「ここで言い合ってても仕方ないからミスティに診てもらおう」という悲魔の提案で、診療所に訪れることになった。 しばらく前に冒険者としての第一線を退き、今では魔法医として冒険者や街の人たちを世話している。 医者が彼女1人ということもあり、なかなか多忙な日々を送っている。 「悲魔くん……こっちも忙しいんだよ? 健康な人間をとっ捕まえて『診察してほしい』なんて冗談はやめてもらえない?」 「へ?」 素っ頓狂な声を上げたのは悲魔だった。 「ヘ? じゃないよ…… あの子の怪我は治ってる……というより、そもそも怪我してたの?」 「俺が直接見たわけじゃなくて、うちのメンバーが連れてきたから」 そのときの状況を悲魔は説明する。 「ふむ……事情は飲み込めたよ。 でも今日は忙しいから日を改めさせて」 そう言って慌しく身支度をするミスティを後目に、ふたりは診療所を後にしたのだった。 「だから平気だって言ったじゃないですか」 クスっと微笑むエルファリア。 「……みたいだね」 疑問は残ったけど自分ではどーすることもできないと悟って悲魔は話題を変える事にする。 「そだエルさん。 昨日少し話しをしたと思うけど、このクロノスではなにをするにしてもお金が必要で、 そのお金は街の外にいるモンスターを倒さないと得ることができないんだ」 エルファリアはコクンと頷く。 「そのためにはエルさんも冒険者として登録をしないといけないんだ」 「……冒険者……わたしにもできるんでしょうか?」 不安そうな顔で悲魔を見る。 「ふふっ 最初は誰でも不安になるもんさ。 けど大丈夫。エルさんのことは責任持って俺たちが面倒見るからさ」 「ありがとうございます」 悲魔の言葉で幾分不安が拭えたのか、エルファリアは明るい声でお辞儀した。 その夜。 シェリルの店で歓迎会が盛大に始まった。 「それじゃ、エルちゃんのSSD入団を祝して」 『乾ぱ~い』 カシャン! ジョッキが打ち鳴らされ、アルテミスは注がれていたビールを一気に飲み干す。 「ふ~~~っ!! お酒飲むとやっぱこの一杯のために生きてなぁって思えるね♥」 「アル……オヤジ入ってるぞ」 「ってかピッチ早すぎ」 「何か言った?」 口々に出る揶揄にジロっと睨むアルテミス。 『なんでもありません』 「いーじゃない。ねーエルちゃん?」 「へ? ええっ!?」 「アルさんいきなりエルさんに振っても困るだろ」 すでに3杯目に入ったアルテミスには聞こえていないようだ。 (こーなったアルさんは誰にも止められないから、少し相手よろしくね) 苦笑しながら悲魔が小声で頼む。 「でさ エルちゃん登録済ませたんだよね?」 「はい」 アルテミスの質問に答えるエルファリア。 「適正の結果はどーだった?」 アルテミスはエルファリアが就ける職に興味津々の様子で聞く。 「それが……『また明日来てくれ』だそうで」 「ええっ!? ヘガーのやつサボってんじゃないでしょうね」 期待していた答えと違う内容に、アルテミスは不満そうに口を尖らせた。 「ん? どしたの?」 「きーてよヒマさん! エルちゃんの適正結果明日になるんだって」 「あ、それ俺も聞いたよ」 「む~~」 「けどおかしくないか?」 話に割って入ってきたのは聖騎士シュウだ。 生真面目で信頼が厚い人とグロが教えてくれた。 「おかしいって、どんなふうにっすか?」 グロの質問に 「どんなに忙しくても適正の結果が出るのはすぐだったじゃないか…… なんでエルさんだけ……」 「俺もそこが引っ掛かったんだけど……」 「まぁいっか、明日には結果が出るんだし。 エルちゃんバルキリーだと嬉しいなぁ」 悲魔の懸念を途中で打ち切るアルテミス。 「ったく、アルはお気楽なんだから……」 シュウが苦笑する。 そんなこんなで夜が更けようとしていた。 -to be Continued- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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