夏になると、子供達は『怖い話』を怖がりながらも聞くのが大好きです。
以前もご紹介したことがありますが、
私が子供の頃、母方の田舎に行くと、いとこ同士が集まった時に、叔母さんたちがよく
『怖い話』を聞かせてくれたものです。
こんなお話です。
↓
昔ある村に宗平という男が住んでいました。
宗平はある晩、隣村で親戚の婚礼があるということで、お昼ご飯を食べ終わると風呂敷に着物などを入れて家を出ました。
日暮れ前には峠を越えて山向こうの隣村にたどり着きます。
親戚の婚礼はとてもにぎやかに行われて、無事に終わります。
夜中に峠を越えるのは危ないから今晩は泊まっていったほうがいいと親戚に止められはしたものの、宗平は翌日の田んぼ仕事があるからと、それを断り、お土産に戴いた紅白の饅頭を下げて、来た道をとぼとぼとほろ酔い気分で戻っていきます。
いつも通っている山道とはいえ、さすがに夜中ですから、灯篭の薄明かりだけでは、足元を照らす程度で、なんとも頼りないものです。
そろそろ峠にかかる頃だが・・と思いつつ歩いているうちに、ほろ酔い気分も覚めてきて夜中の山道の薄暗さに少しばかり心細くなってきます。
いつもならとっくに峠を越えているはずなのに、歩けど歩けど峠に差し掛かりません。
ひょっとして道を間違えてしまったのかもしれないと思うと、不安からか、足取りも速くなってきます。
しかし、山道は険しくなるばかりで益々不安が募ってきます。
暫く歩いているうちに、向こうのほうにうっすらと人家らしい明かりが見えます。
これは助かったと宗平はさらに足取りを速めてその明かりに向かって歩いていきます。
「トントントン」
戸をたたくと中からその家の奥さんらしき女が現れ、事情を説明すると快く家に上げてくれました。
「お荷物はその辺にでも置いて、さあ、こちらでくつろいでください」
「これといってもてなすようなものも御座いませんが、山の中の一軒家で寂しく一人暮らしをしておりましたので、通りすがりの方とはいえ、これも何かのご縁ですからどうぞ今夜はここで泊まって明日の朝にでもお出かけください」
そういわれて、不安で心細くなっていた宗平の気持ちもやわらぎ、今日の婚礼のことなどを話し、楽しいときが流れます。
「夜も更けてきましたからそろそろ休ませていただきますね」
そういうと宗平は疲れていたのも手伝ってあっという間に眠ってしまいます。
翌朝、なんだか騒がしい様子に目が覚めた宗平の周りには通りすがりらしい人が集まっています。
「こんなところで何をしているのですか」 と一人の旅人が尋ねます。
周りを見回すと、寝ていたはずの一軒家は跡形もなく、そこは朽ち果てて廃墟となった山寺の板張りの上です。
状況が掴みきれない宗平は、とにかく事情を説明しようと昨日の出来事をその旅人にはなします。
するとどうしたことでしょう、旅人は大声で笑いながら言うのです。
「狐にだまされましたね」
「そんなことはありませんよ、このとおり昨日もらったお土産の紅白饅頭もありますし、決して夢でもなければ、ましてやきつねになんぞ騙されたりしませんよ」
「そうですか、でもね、あなたが手に持っているものは『馬の糞』ですよ・・・」
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