尾道ロケ地巡礼「東京物語」浄土寺#2
小津安二郎監督の集大成にして最高傑作との呼び声高い「東京物語 (1953年作品)」より。●浄土寺尾道へロケ地巡礼の旅に出かけた時に撮影した写真。映画の序盤と終盤に登場するこの浄土寺へは坂道をほとんど登らないで済むから比較的ラク。(結構長い階段はあるけど。笑)観光の起点となるロープウェイ駅からは離れているため、巡回バス等を利用するのが良い。その浄土寺が登場する映画「東京物語」の内容は・・・尾道に暮らす老夫婦、平山周吉(笠智衆)・とみ(東山千栄子)が、独立した子供達の暮らす東京へ会いにやって来る。しかし、内科医の長男(幸一:山村聰)と美容院を経営する長女(志げ:杉村春子)は、久しぶりに会った両親を「忙しいから」と邪険に扱う。うちわを手放せない暑い夏の東京・・・。立派な大人に成長した子供達だが、パタパタとウチワで扇ぎつつ語る姿は両親の来訪に苛立ってるようにも見える。小津カメラはそんな彼らを冷やかに捉えて行く・・・。身につまされる描写だ。対照的に、結婚後わずか3カ月で出征し戦死した次男の嫁(紀子:原節子)は、血の繋がらない義父母を東京案内するなど優しくもてなす。家族とは一体何なのか・・・、考えさせる。そして色々と経験した後、周吉らは尾道へ帰ろうとするのだが・・・。●浄土寺から見おろす尾道水道この角度で撮影されたシーンが映画ではよく使われている。古い町並みが残る尾道でも、海岸沿いは現在と様子がかなり変化していた。また、写真右下に宝篋印塔など小さく見えているが、その画も何度か挿入されていた。「東京物語」は時代を切り取った等身大のドラマであるにもかかわらず、現代に通ずる問いかけが多い。結局「家族」とは普遍なテーマなのだが、同時に映画は「都市集中型の高度成長が核家族化を促し地方を切り捨てる」そんな未来をも予見していた。例えば、尾道から届く「母危篤(ハハキトク)」の連絡は電報だが、東京の子供達間の連絡は電話で行なわれている。といった具合に、早々と地域における格差が描かれていた。意外と風刺に富んだ映画である。