スケートの羽生さんが金メダルで本当に良かったです。
同じ右足首靱帯損傷という状態になった私は、自分の足の状態と比較して「スケートは無理でしょう」と思えてなりませんでした。治りきる前に練習なんかしていたら、治るものも治らないですよ、普通。

でも、彼は滑り切って金メダルでした。金メダルへの並々ならぬ思いがあったことも、インタビューでわかりました。でも、フリーだとよくわかりますが、トリプルルッツで転んでいたら、今頃日本人はどんな意見を言っていたかわからないと思います。彼の選手生命は、多分、意外なほど危うかったと思います。その大切な選手生命をかけ紙一重のギリギリのところにありながら、でも、何気ない軽やかさでバランスを取り切って優勝してしまいました。それが、時代の寵児なのかもしれません。

まさに、神に選ばれし者に他なりません。羽生さんは、きっと、震災の時に何か啓示を受けたのかもしれません。

私はキリスト教信者ではないけれど、「神様っているなあ」と思った瞬間でした。

ショートプログラムの次の日、私の足が朝から痛かったので、もう心配で心配でたまりませんでした。何が起きるんだろう、無難に終わって欲しいと思っていました。結果はうんと良いか、悲劇が起こるかのどちらかだと思えたからでした。

結果、最高の金メダルになってくれて本当に良かったです。

ショートプログラムの時、ネイサン・チェンさんは、羽生さんの金メダル姿が見えてしまったのでしょうね。宇野さんはそれを受け入れて「やっぱり勝てないな」と笑って自分のペースを守れましたが、ネイサンさんは徹底抗戦したかったのではないかと思います。自分が半ば受け入れてしまったものに抵抗すると、自分で自分のペースを崩してしまいますから、ショートプログラムで自滅することになってしまったのかもしれません。

これを見ると、オリンピックって魔物にやられないように、「時代の寵児」には勝てませんって風を装いつつ付かず離れずの位置につけ、最後の最後に指先だけ横から出して「時代の寵児」からメダルをかすめ取るような作戦をとることも必要じゃないかと思います。その点、ケガの状態を全く流さず、ショートで軽やかに飛んで見せた羽生さんサイドの作戦は大当たりでした。

次回のオリンピックは、今回の結果から見るとネイサンさんと宇野さんの争いになるように見えますが、でも、きっと新たな選手が躍り出てくるのでしょう。そのあたりを羽生さんはすでに理解しているのではないでしょうか。ちょうどオリンピックイヤーに自分の最高のタイミングを２度も合わせることができるのは、持って生まれた運ですから、今年にこだわった羽生さんの気持ちは終わってみるとよくわかります。でも、この人はすごいね。あの若さで自分の体調も、周りの状態も、世界のスケート界の状態も、人生設計も見えているから。

若い時の私に、このくらいの計画性があったら、今頃もっとずっと良い人生があったかもしれないなあ、なんてちょっとため息つきたくなってしまいます。

せめて、今後はいくらかでも将来を見据えてがんばっていきたいです。羽生さんと宇野さんのメダルからパワーをもらってね。