カテゴリ:思い出
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人気ランキングに参加しています。良かったらお願いします。 にほんブログ村 ^-^◆ 居酒屋のカウンターで知った人の真の姿 <Revival> 居酒屋のカウンターで……、ひとりシミジミ飲んでいると、 某大手企業の人事係長が独りで来店した。 彼も、この店の常連なのだ……。 東大法学部卒のエリートとかで幹部候補生という噂を聞いた。 いつも澄ました顔…………というよりは、 無表情で連れの仲間と議論を交わしている。 そして…………最後は、いつも彼が皆を諭す様な感じで 終わっていたのを……幾度か見たことがある……。 目が合った。 互いに軽い会釈……。 会釈にもどことなく威厳というか、冷たい『品』がある。 見るからに典型的なエリートタイプだ……。( 一一) 互いに話をした事はないが、店で何度も一緒になっているので、 挨拶くらいは交わす間柄になっている……。 この小さな居酒屋には、やや、似合わない存在だが、 上司に連れてこられてから、気に入ってくれて、 通ってくれるようになったと……女将さんが言っていた。 ……今日は、珍しく独りの様だ…………。 珍しい事だ……。 たいてい、何人かの同僚や上司と一緒に来ていた。 それに今日は、えらく地味な服装をしている。 顔色も悪く、少しやつれて見えるのは気のせいか……。 奥から 「まぁーいらっしゃいませ。お久しぶりですね(^.^)」 と、女将が出てきて、おしぼりを渡す。 「なにやかやと、忙しくてご無沙汰しました……」 「そう言えば、テレビで見ましたよー。先日の事故……、 大変でしたねぇー」 「…………(-_-)」 「ああ……その関係で忙しかったんですね。 そうなんですね……。 ……色々と大変でしょう?」 「ハイ……まぁ…………(-_-)」 ビールグラスを傾けながら、聞くともなく聞いていたが……、 どうも何時もと違う……。 ……口数が少なく、歯切れが悪いようだ……。 「……でも、工場始まって以来の大事故だったんでしょう? 数十人の方が亡くなっても仕方ない位の大爆発だったって、 聞いてますよ……」 「……………………(-_-)」 「テレビで見ましたけど、亡くなった方が一人とかで……、 ……そんな事で済んで……良かったですね……」 「良くはありませんよ! (-_-)」 絞り出すように彼が言った。 「えっ」と、女将が驚いた反応をした時、 「ううっ……」 腰かけている両ひざに、両腕を突っ張って彼が泣きだした。 えっ!! 何が起こったんだ!! あの、クールなエリートの彼が泣いている……。 「どうしたんですか?」と、恐る恐る……女将。 「1人の命も10人の命も命の重さに変わりはありません!!」 「…………」 それから……、彼……つまり某大手企業の人事係長が 語り出した話…………。 彼は、今度の事故で亡くなられた一人の社員の自宅に、 通夜に行っての帰りだったのだ……。 ……それで黒っぽい服装だった。 亡くなられたのは、前途有為の若い社員…………ということ。 …………泣き崩れる奥さん。 ………………茫然自失のご両親。 ……意味が分からず、ちょこんと座っている二人の幼子。 ……「会社に殺された!」と罵倒を浴びせる親戚の人達。 彼は、そんな通夜の席を務めてきたばっかりだったのだ。 大変な場だ……大変なことだ……。 「会社の中で、人が死ぬなんて……絶対にあってはならない! 若い社員の将来を奪い、家族から、夫・父を奪い……何が 大企業だ!!何が一流企業でしょう……!!」 「……」 「我が社は、大企業などと、驕ってはいけない…………。 人の命よりも大切なものなんてありはしない……」 悔しそうに、膝を叩きながら、目を真っ赤にして話す彼の姿に こちらまで、涙ぐんでしまった…………。 ともすれば事故処理を事務的に運ぼうとする上司たちの 淡々とした言動も許せなかったようだ……。 痛ましい工場での事故死……。 この彼は、生まれて初めての経験をしたに違いない……。 女将も、涙ぐんで聞いている……。 暫くして、少し落ち着いてお酒を飲みだした彼に、 「遺族に出来るだけの事をしてやらねばなりませんね……」 と女将が静かに小さな声で言った……。 ……まるで子供のように、素直な頷きを見せる……彼。 いつもの彼とは、全く別人の彼がそこにいた。 一般には、『官庁よりも官庁的な会社』と揶揄されている、 この会社に、こんなに熱い幹部候補生が居たのか!! 「おっとこ(男)だねぇ―!!!!(>_<)」 思わず、そう言って彼の傍に行き、 お銚子を取ると彼に酒を注いだ。 「どうも……お恥ずかしい所をお見せしました」 そう言って、盃を飲み干した彼は、その盃をこっちにくれた。 なみなみと注いでもらって……、 「これからが大事な正念場やな……」と、言って、飲み干した。 「あんたみたいな人が、あんな超大企業に居て、俺は嬉しい。 流石に大手の会社や。立派な社員を持っている……。 ……頑張って……」 握手を求めてきた彼の手を握り返して……元の席に戻った。 ホントにこんな熱い彼を見たのは、最初で終わりだ。 丁度、3人……新しい客が入ってきたので、 ひとつの、場面転換になった。 一人の人間には、 その人を囲む家族、親族、友人、会社の同僚、 その他様々な人の輪が、歴史と共に広がって存在している。 その一人の人間が、突然消え去るという事は……、 言うまでもなく、これは、大変なことだ。 ……一人の人間の命の重さ…………。 その彼は、 その後「クール須崎」と異名を取ったらしいが……、 その20年後に社長にまで上り詰めた。 ……彼の、若き日の、エピソードである。 人気ランキングに参加しています。良かったらお願いします。 にほんブログ村 ====================================================== ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 14年間蓄積した本ブログの一部を抜粋して本にしました。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中巻・下巻)』です。 それぞれ200円です。(^-^) AMAZON公式サイトで「愛ことば」で検索して下さい。 良かったら、どうぞ。よろしく、お願いします。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中・下巻)』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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