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愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

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2021/07/02
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カテゴリ:思い出












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  ^-^◆ シルバーシートの淑女に向けられた誤解の視線
          <Renewal>



 忘れもしません……。鬱陶しい梅雨の頃の、昼下がりでした。
バスで、到津の森公園から小倉へ向いました。
バスはシルバーシートが1席空いているだけで……、
4、5人の人が立っていました。

 乗った直後は何ともなかったのですが……、
15分位経った辺りから何時もの立ちくらみがして……、
その4、5分後にはますますひどくなって…………苦しい……。
このままだと人に迷惑を掛けると思い……、
座らなければ……と見たんですが…………、
まだ、シルバーシートしか空いていません。


       シーサー.jpg


 ……でも、堪らず……取り敢えず座りました……。
もう、自分の事で精一杯で……、丁度その時高齢の男性が
乗って来られた事も気付かない程でした。
座ってすぐに一人の女性の大きな声がして……。
「お爺ちゃん、席を譲ってもらったら…」と………。

 声は聞こえたのですが、今立つときっと倒れる、
回りにも迷惑かけると思いじっとしていました。
目を閉じると余計に悪いので……目を閉じる事も出来ず……、
回りの冷ややかな視線を感じながら……。……じっと……。
………脂汗が出て、たまらない気分……暑い……。


       狸.jpg


バスが三萩野に着いた時、又5、6人の乗客があり、
ますます混雑してきました。
シルバーシートに座って居た一人の女性が立ち上がり、
「お爺ちゃんどうぞ……」と声を掛けるのが聞こえました。

 お爺さんは80代位、女性は70才位でした。
若い私には、回りから冷ややかな視線が向けられます。
バスを降りたいのですが……立てる状態に無く、
それも叶いません…………。

私にとっては……長い……長い時間に思えたのですが……、
「旦過のバス停」と言う運転手さんの声……。

 今なら何とか……と感じ、ようようの思いで立ち上がり、
何と……乗る方の扉から降りてしまいました。
早く降りたい、風に当たりたい……との一心で
「お客さん料金を……」と言う運転手さんの声は
聞こえたのですが……。


       チューリップ.jpg


 ……降りた安堵感と、複雑な気持ちからの解放で……、
そのまま倒れたらしく……、気が付くと何だか倉庫の様な所で、
タオルに包んだ冷たい氷が額の上にありました。
回りには中年の女性とランニング姿の男性が2、3人。
……ボォ~と、目に入りました。事態がよく読めません。

 辺りを見渡すと女性の声……。
「気が付いたね、直ぐに救急車が来るよ……」
ああ~~と、今までの事を思い出し……、
倒れたのだと気が付きました……。

 側の男性が「このおばちゃんは、バスを降りてずっと
居てくれたんよ」と説明してくれました。


       熊さん.jpg


 ……その時サイレンの音がして救急車が来たようでした。
やっと状況が理解できたのと、何だか大げさに成った事で、
恥ずかしくもあり、又、気が遠く成りそうな私でした……。

 ……が、取り合えず病院へ連れて行って貰おうと、
救急隊員の来るのを待ちました。

 数秒で来た担架に乗ったのだと思いますが、恥ずかしいのと
気分の悪さで、又、ダウン……。

 確か、救急隊員から聞かれたのだと思いますが、
「済生会病院に……」と言ったみたいで……、
気が付くと主治医の顔が私の目に……。
途端に涙が溢れ、子供が迷子になって、
やっと親と巡り逢えたように泣きじゃくりました。
その日一日の不安と、恥ずかしかった事が頭に一杯で……。
涙が止まりませんでした。
その後、入院と成りましたが……、
経過は良く、四、五日で退院することができました。


      青熊.jpg


 気になったのは、私に付き添ってくれた女性と、
介護してくれた場所でした。病院へ尋ねると、
救急車に聞かないと分からないとの事だったので、
訪ねて行きました。
初めての経験の救急車ですが、何と、場所・助けた人の
住所・氏名はきちんと記録に残してあるのです。

 場所は旦過の魚屋さんの倉庫でした。
行って見て成るほどと思いました。バス停のすぐそばで、
魚屋さんだから沢山の氷が有ったわけです。
丁寧にお礼を述べて、女性の住所へ訪ねて行きました。

 家を見付けて伺うと、びっくりした様子でした。
その節のお礼を、丁寧に述べました。
すると彼女は「具合の悪い事も分からずに悪い事を言った」
と逆に謝られました。
バスの中で「お爺ちゃん、席を譲って貰ったら…」と言った
女性だったそうです。

 人の事がほって置けない性分だそうで……、
私の事もそうで……介護してくれたみたいです。

 バスの中の事、介護してもらった事も、
あまり記憶に無いのですが、大きな声で言われた事への、
恨みにも似た覚えは残っている自分が恥ずかしくて……、
彼女に心からのお礼を言って早々に帰りました。

 複雑な…、とても複雑な……思い出です……。

      < 友人の体験談より >



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       < 鯛が二尾いる珍しいラベル >





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Last updated  2021/07/04 10:37:19 AM
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