カテゴリ:思い出
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人気ランキングに参加しています。 良かったら【ポジティブな暮らし】をクリックお願いします。 にほんブログ村 ^-^◆ 盲目の父を懸命に守る幼児<街角のハプニング> <Renewal> それは3歳位の男の子であった。 手を引いているのは、30代半ばの男性……。 いや正確に言うと手を引いているのではない。 子供の方に手を引かれているのだ……。 眼が不自由な様子だ。右手に持った白い杖と、 やや濃いめの黒い眼鏡で察せられる。 ……どうしたことか信号が青になっても渡らないで、 ふたり立っている。 父親が(……多分父親だと思うのだが)腰を折って 子供に何か尋ねている様子………。 何となく気になったので少し離れた所から見ていたのだが……、 話している言葉が、かなり語気荒く、 相当苛立っているような口調だ…………。 子供は真剣な表情で、右、左と周りの建物を見上げている。 ――――父親が子供の手を引っ張り上げる様にして 向きを変え、再び何か強い口調で聞いている。 何か……目標となる建物か何かを確認しているのだろうか? …………どうもそうらしい。 子供は必死の面もちで、何度も何度も深く頷きながら、 キョロキョロしている。 ちょっと幼すぎて、可愛そうな感じだ……。 怒る方も無理な話だと思うが……。 でも、こうやって二人で街に出てきているところを見ると、 この子は、普段から父親の目となって動いている 子供なんだろう……。 ……小さな体が痛々しい。 ……もう少し近づいてみた。子供の目には明らかに 不安の色が出ている。父親の苛立ちも、高度になってきて 「………今日はどうしたんだ……」と言うような言葉も 聞こえてきた。 幼いが、普段からしっかりした子に違いない。 ……とは言っても、3歳位だよ…………。 とうとう、子供は泣きそうな顔をして下を向いてしまった。 もっと、近づくと、 「……背の高いビル……」という言葉が聞こえてきた。 この辺りで、高いビルといえば福祉センタービルだ。 ……ピンときた。多分駅から来たのだろうが……、 通りを一本間違っている。 その方向を見ると、センタービルが、他の建物の上に、 頭をチョコンと出しているのが見える。 これはもう助けてあげねばと、ツカツカと歩み寄る。 子供は、天の助けとばかりに、すがるような目を向ける。 「どちらにお出でになるんですか」と聞く………。 ………と運ぶはずだった。 ところが、私がちょっと近づくと……、 その子は明らかに身構えて左手を突っ張る様にして、 物凄い形相で私を睨みつけるではないか……。 一瞬面食らった……。声を飲み込んだ……。 幼な子とはいえ、ど迫力の形相だ……。 「怪しい者」と思われたか……? その子が必死で父親を守ろうとしているのが見てとれた。 「誰かおられるのか」と父親が聞いたが、 その子は無言で一歩下がって、 丁度父親と私との間で「通せんぼ」をするように身構えた。 ……恐い顔……。 こっちも、一瞬声も出ない。 幼い子供からこんな恐い顔で睨まれたのは初めての事だ。 そんなに怪しげな風体をしているわけでもないんだが………。 小さな子供の、全く予期せぬ意外な行動に驚き、呆れ……、 怯んでしまっているこちらの気配に、 何か感じたのだろうか……、 父親が「福祉センターに行きたいのですが……」と聞いてきた。 答えようとしたら、子供が首を振るようにして睨み付けてきた。 えっ?……父親を守っているのではないのか? ええっ…?自分の責任を果たそうとしているのか……? ……まさか……、……まさか、3歳位の子供が………? 仕方が無いので福祉センタービルの方を、 さっと勢い良く指さした……。 子供は、そっちを背伸びするようにして見ていたが、 次の瞬間顔の強ばりを解いた……。 そして、ググーンと、父親の手を引っ張って、 斜めになってそちらに歩き始めた。 「分かったのか?おい、おい、わかったのか?……」と、 慌てている父親の手をグングン引っ張って、 あっという間に向こうに行ってしまった。 思えば、シトシトピッチャンの大五郎にちょっと似た顔だ。 特に………意地っ張りの表情が………そっくりだ。 気になるので、しばらく見ていたが、ちゃんと、 センタービルの方に向かっている。 ………ほっとした。 それにしても、まいった、まいった………。 凄い子供がいるものだ。 本来、母親か家族の者が連れて来るようになっていて、 急用か、病気とかで来れなくなったのかな……? それで「坊や、お父さんを頼むよ」なんていって、 責任を負わされたんだろうか?……等などと、 勝手な事を考えながら、 …………そして、健気な態度に、胸を熱くしながら 眺めていると、やっと、二人が普通の安定した歩き方に 戻った。 これで良し………と思ったとき、 その子が歩きながら私の方を振り向いた。 父親の手を引いて歩きながらだから、 今にも転びそうになったが、顔はこっちを向いている。 この子は私がまだじっと見ていることを知っていたんだ。 又、振り向いた。そんなに、怖い顔には見えない。 …………遠いからだろうか? ……又、振り向いた。 ……私にはそれが、この子なりの、お礼に映った……。 違うかもしれない。でも、そう思えた。 手を振ろうかという衝動に一瞬駆られたが………止めた。 ……この子との関係には似合わない。 もう一度、私を振り向いて、二人は角を曲がっていった。 ………何故だか、分からない……………。 分からないが…………胸がキュンとなるのを覚えた。 人気ランキングに参加しています。 良かったら【ポジティブな暮らし】をクリックお願いします。 にほんブログ村 ==================================================== ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今まで蓄積した本ブログの一部を抜粋して本にしました。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中巻・下巻)』です。 それぞれ200円です。(^-^) AMAZON公式サイトで「愛ことば」で検索して下さい。 良かったら、どうぞ。よろしく、お願いします。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中・下巻)』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 人気ランキングに参加しています。 良かったら【ポジティブな暮らし】をクリックお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2024/11/18 01:00:10 AM
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