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カテゴリ:『CRONOUS』 ~黙示録~
『CRONOUS』 ~黙示録~
第6話 『-博徒見参-』 朝…僕は寝室を出て1Fのリビングに降りる リビングは昨日の宴会騒ぎの状態のままこれでもかというくらい散らかっていた 白魔童はなぜか玄関先で…うほほいは腕立て伏せの体制のまま床で寝ていた そんな時…アジトの外で話し声が聞こえたので僕は外に出てみる 「いやぁ…早朝からすまなかったね…」 「いえいえ…でもどうしたんです?」 「まぁ…ちょっとね床に穴が開いたんで直そうかとねw」 「じゃあ支払いは月末って事で…まいどぉ!」 話をしていたのはトゥイージーと建築全般を取り仕切っているギルドの人だった おそらく昨日の床に空いた穴の補修材料を受け取っていたんだろう トゥイージーは僕に気付く事無く懐からタバコを取り出すと 口に咥えて火をつけ早朝の空に向けて煙を吐き出した 「と、トワさん…おはようございます」 僕がトゥイージーの背中にそう声をかけると 「お?…ああザンさん早いな…もうちっと休んでればいいのに」 そう言って苦笑いを浮かべた 「タバコ…」 僕がそう言いかけると 「やめてたんだけどな…ギルマスになった時から吸うようになっちまってなw」 トゥイージーはそう言って笑った タバコを指先で持たず人差し指と中指の根元に挟んで口元を覆うように吸う独特の吸い方 その姿はとても様になっていて僕にとっては懐かしく…憧れでもあった 結果的に僕にはタバコは体に合わず吸う事は断念したが タバコを吸っているトゥイージーを見て吸ってみようと思ったのは事実である 「あの頃はさ…何も考えなくてよかったんだよな…おそらくザンさんにも迷惑かけてたんだろうなw」 トゥイージーはそう言って苦笑いを浮かべると大きく煙を吸い込んで空に向かって吐き出した 「迷惑だなんて…そんな…皆さんが居てくれたから僕なんかでもギルマスが出来たんですよ…」 僕はうつむき加減でそう答えた 「いやいや…なんだかんだで居心地が良かったからこうしてみんな残ってるんだぜw…あの時のギルドの指針は俺が受け継いでるそしてこれからも…」 トゥイージーはそう言って僕の肩を叩くとタバコをブーツの裏でもみ消して近くに置かれた吸殻入れに捨てた その時…どこからか 「猫じゃぁ猫~じゃとおっしゃいますがぁ~~~♪」 と気の抜けた歌声が聞こえてくる 僕とトゥイージーが顔を見合わせると 「猫~がぁ~猫が下駄履いて~絞りの浴衣でぇ来るもの~かぁ~♪」 歌声は徐々に近づいて路地からバーンが現れた 「えらくご機嫌だなwその様子だと大勝か?」 「おお!ご両人!早いねぇ~♪」 満面の笑みでバーンがそう答えた 僕も頭を下げて挨拶をした 「でもまぁアレだ…ほどほどになw」 「うん?ああ…こればっかりはやめられないなw…ほらよ!」 バーンはそう言うと懐からタバコを出してトゥイージーに投げ渡した 「サンキュ!…今日の所は頂いておくよ」 トゥイージーは受け取ったタバコを懐にしまった 「昨日は闇賭場だろ?頼むから捕まらないようになw」 トゥイージーはそう言ってバーンの肩を叩いた 「了解だw」 バーンはそう答えてタバコを咥えて火をつけた 闇賭場というのは…いわゆる非合法な賭け事をする場所で時々王国の役人が入り捕まる事もある危険な場所である その反面…通常の賭け金よりも大きな金額が動き一攫千金も夢ではない まぁ…無一文になる可能性も当然あるのだが… バーンは元々傭兵でどこのギルドにも所属してなかったが 賭博で無一文になったところをマウンテンに拾われて黙示録のメンバーになったという経緯がある 「で…えらく勝ったのか?」 「そりゃあもう…数か月は遊んで暮らせるねw」 「ガッツリ負けないように気を付けてくれよw」 「そん時は運がなかっただけさ…金は天下のまわり物ってねw」 「まぁ…そうだけどさ」 トゥイージーは苦笑いを浮かべる 「俺が息抜きでやってる博打なんて可愛い物さw」 「ええ?もっとすごい博打があるの?」 僕は思わずそう聞き返した 「あるよw…人生っていう名の生死をかけた大博打がねw」 「なるほど…だが、それは博打というには…どうかな」 トゥイージーがそう言うと 「博打さ…今もこの瞬間、瞬間…俺たちは賭けてるのさ…例えば今日狩場に行って死に目に遭うとするだろ?どうしてそうなったと思う?」 バーンがそう質問してくる 「戦い方が悪かった…からですかね…」 僕はそう答えた 「直接的にはそれが答えだな…しかしそうなる為にはそうならないための準備ができたはずさ…違うか?」 バーンはそう言ってニヤッと笑う その顔は…ふざけてるのではなく…獲物を狙う猛者のような鋭い表情だった 「つまり…全ての結果には要因ってのがあるわけで…今日、もしもそうなったとすれば…今日よりはるか前にこうならない為の因果に賭けてなかったって事さ」 バーンは続けざまにそう言うと上着を脱いだ そこにはおびただしい数の傷が刻まれていた 「明日できる事は明日やればいい…そんかわし、今できる事は今やる…いつか負けない為になw…無一文になるなんて怖くもなんともねぇよw」 バーンはそう言って高笑いしながら煙をを吐き出した 並みの人が言えば戯言…しかしその鍛え抜かれた体は伊達や酔狂ではなかった そこからもバーンという人がただの博打好きな遊び人ではない事がうかがえる ちなみに余談ではあるが… バーンはタバコを親指と人差し指でつまんで吸う 同じタバコ吸いでも人それぞれという事がここからもわかる 「で…その材木は?」 バーンがトゥイージーにそう聞いた そこで昨日あった出来事を話して聞かした 「ぶはw!…相変わらず激しいなぁw」 「まぁねw」 大笑いするバーンに対しトゥイージーは苦笑いを浮かべた 「そんじゃあ…サクッと直しちゃいますかw」 バーンはそう言って玄関先の材木を担ぐとアジトの中へと入って行った 少し話し込んでたとはいえ時間はまだ早朝 床の補修の音で次々とメンバーが起きてくる 「お!ドラちゃん帰ってきたのねw」 白魔童が額にタオルを巻いて床を修理しているバーンを見てそう声をかけた なぜかはわからないがバーンの事を「ドラちゃん」と呼ぶメンバーがいる 「勝ったの?」 カラーが目を輝かせてバーンに聞いた バーンは無言でVサインで答えた 「おごってくれ~!」 白魔童がそう言ってバーンに縋り付くと 「しかたないなぁ…うんじゃぁ…丁半博打といきますかw…白さんが当てられたら全員にテラのディナーご招待!負けたら残念またの機会って事でw」 バーンのそんな提案に白魔童は上半身の服を脱いで床に叩きつけると腕組みをして座る 「いくぜ…丁半どっちに賭ける?」 「うーん…丁!…いや、そう見せかけて半!…丁…半…丁…………半だ!半で行くぜ!」 「半だね…じゃあ振るぜw」 バーンはそう言うとポケットからサイコロを出して床に転がした 1つはすぐに止まり「1」が出る…もう1つはじらすように回り続ける 全員が食いつくように回り続けるサイコロを見つめる やがてサイコロは徐々に回転を弱めて「1」の目が出た 「ピンゾロの丁!残念だったねぇ…www」 バーンは床に転がったサイコロを拾うとそう言って笑った 「ちょっと白さん!」 カラーのそんな言葉を皮切りに全員の鋭い視線が白魔道を突き刺す その時…バーンの元にトゥイージーが近づくと 「ピンゾロしか出ないサイコロなんじゃないの?…それ」 と小声で耳打ちする 「ははははは!イイところに気が付いたねwだが、イカサマも見抜かれなければ立派な技術…まぁ運がなかったって事さw」 バーンはそう笑いながら手に持ったサイコロをトゥイージーに渡して床の補修を再開し始めた 「そりゃそうだなw」 トゥイージーは笑いながらそう言って渡されたサイコロをテーブルに転がす サイコロの1つは「1」の目が出てもう1つはさっきのように回転した そしてしばらく回転したのち「6」の目が出た 「なるほど…やめられなくなるなこれはw」 トゥイージーはそうつぶやいてフッと笑った …『To Be Continued♪』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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