テーマ:猫のいる生活(139061)
カテゴリ:藍野家の日常
ことの発端は、昨夜のできごとだった。
父母が晩酌をしようと、酒と肴を用意した。 この『さかな』が、問題だった。 父母が用意したのは、焼アジ。 5cmほどの小さなアジのひらきをかりっと焼き上げて、そのまま食べられて、また、 常温で保存できるように、調理してある。 これを買ってしまったことが、はじまりだった。 次女クリス(猫)は、人間の料理が好きである。 長男バーニィ・次男アルは、料理のにおいを多少は気にするが、生後2~3ヶ月から キャットフードで育っていることもあってか、「だめだよ」と強めに言えば、 人間の料理にはそれほど執着せずに、食卓から離れる。 しかし、クリスは3ヶ月前までノラだったので、これまでの食生活がわからない。 どうやら、人間から料理をもらっていたか、あるいはゴミ箱をあさって生きていたようで、 人間用に味付けをされた料理に、激しく反応する。 特に、魚料理への“こだわり”は、半端ではない。 キャットフードを食べるよう諭して食卓から離すのは、とても難しい。 昨夜も、焼アジを食べたがったクリスが大騒ぎするのを、父母が必死に抑えた。 最後には、クリスをこれ以上刺激しないように、父母は途中で晩酌を切り上げて 焼アジを台所に下げなくてはならなくなってしまった程である。 その後、ベッドに入った母は、異様な物音に目を覚ました。 居間の方から、うなり声のようなものが聞こえる。 電気をつけた母が見たのは、まず、目の前の光景に動揺している、バーニィ。 そして、バーニィのお気に入りの寝床で、うなり声をあげながら何かを くちゃくちゃと噛み砕いている、クリス。 居間から台所(猫は立入禁止)への扉がこじ開けられていて、クリスの足元には、 台所にしまっておいた焼アジのパックが落ちていた。 「クリスっ! あなたは人間のごはんは食べないの! それ貸しなさい!」 母が声を上げ、アジを取り上げようと手を伸ばす。 アジをくわえて、寝室に逃げるクリス。 いよいよ母に追い詰められたクリスは、最後には母の手を噛んで応戦。 しかし、抵抗むなしく、クリスのかじりかけの焼アジは取り上げられた。 常温保存可能な焼アジだが、クリス避けのため、無事だった分は冷蔵庫に入れられた。 もう一度、台所への扉をしっかりと閉めて、母は改めて眠った。 前置きが長くなったが、そんな騒動が起こった、翌朝。 目を覚ました父母は、室内にどことなく潮の香りのようなものを感じた。 何の匂いか、どうして匂うのかわからないまま、起き上がった。 そして、眠い目をこすりながら起き上がった父母は、そのまま硬直した。 寝室には線のように、茶色い粉末が帯となっていた。 床はもちろん、屋根つきの猫トイレの蓋の上やクリス母子の産箱の中、 果ては人間のベッドのシーツの上にまで、粉がふりかけられている。 粉をたどっていくと居間に行き着き、バーニィの寝床などを通過した後、 終点には、母が味噌汁のだしに使っている粉末にした煮干しの袋があった。 袋は猫の歯形でずたずたになり、中にはもう煮干し粉は残っていない。 台所への扉は、また、こじ開けられていた。 父母は、事態が飲み込めるまでの間、しばらく呆然と立っていた。 昨夜のできごとや、魚への執着の度合いから、“犯人(犯猫?)”はおよそ 推測できるが、断定できる証拠はない。 それに、猫を叱るなら“現行犯”でなければならないだろう。 今となっては“時効”が成立してしまっている。 母から、焼アジの件を聞かされた父は、「その仕返しだったのかな…」とつぶやいた。 「仕返し、っていうより、報復テロだね、ここまで来ると…」と、母。 父母の3連休の初日(とはいえ、父母の店はカレンダーが休日でも営業しているので 休みではないが)は、煮干し粉だらけになった部屋の大掃除の日となった。 それでも、室内の潮の香りは、まだ消えない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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