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テーマ:最近観た映画。(39043)
カテゴリ:映画
昔、鬼太郎の漫画の中で鬼太郎誕生のくだりを見たことがある。鬼太郎というのは、幽霊族最後の生き残りで、墓場で生まれたところを、会社員の水木という男に発見され、その時、父親の死体から目玉だけが飛び出したという。週刊誌による漫画が全盛となる以前は貸本漫画というのが流行っていて鬼太郎は最初は貸本漫画に登場したという。貸本漫画はあまり記憶にないが、床屋などに置いてあることもあり、週刊誌漫画に比べると、おどろおどろしいタッチのものが多かったように思う。鬼太郎誕生のエピソードも絵柄が不気味で赤ん坊の鬼太郎もあまり可愛くなく、貸本屋時代の面影を残したものだったのかもしれない。 貸本版はわからないが、週刊誌漫画では、鬼太郎誕生についてこれ以上詳しくは書いていない。そもそも幽霊族はどういうもので、死体になる前の鬼太郎の父はどういう姿で、そもそも会社員の水木と鬼太郎の親はどんな関係にあったかなど、不明である。 この映画では、そのあたりを描いたもので、会社員水木が犬神家の一族を思わせる田舎の旧家に行き、鬼太郎の父に出あうという物語になっている。設定は昭和30年で水木には戦争体験がある。この時代の大人は普通に戦争体験があったのだが、多くは体験を語りたがらず、だから子供達は戦争というのははるか昔のことのように思っていた。当時は路といえば土道が普通で、田舎から東京ははるかに遠く、東京と聞くと、男の子は川上の試合を見たかと聞き、女の子は銀座のフルーツパーラーに行って見たいという。そんな時代の風景がアニメならではの技術で描かれ、鬼太郎父も、風呂好きであるところや後の時代を目でみてみたいというあたり、後の目玉だけで茶碗風呂に入っているのを彷彿とさせて面白い。 まあ、後半は子供向けのアニメになっているのだが、結局のところ怖いのは妖怪よりも人間なんだなあ…と思う。部下に死を命じながら自分は生き延びようとする上官や、薬品を使って社員を猛烈に働かせようとする会社幹部の姿に、戦前の軍国主義や強欲資本主義批判をみるのは深読みなのかもしれないけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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>貸本漫画はあまり記憶にないが、床屋などに置いてあることもあり、週刊誌漫画に比べると、おどろおどろしいタッチのものが多かったように思う。
貸本屋は私が小学6年から中学3年までの間、近所にあり、この時代貸本漫画で記憶に残る漫画家として水木しげる以外に、辰巳ヨシヒロ、つげ義春、小島剛夕、赤塚不二夫などがいたと思う。 貸本漫画だけで潰れていった漫画家と後世メジャ―漫画誌で花開いた漫画家とに分かれたのではと思われる。 私にとって一番印象深いのは、つげ義春です。つげは貸本漫画時代は、幼稚さというか親しみさが感じられる作品だったと思うが、学生時代、「ガロ」でつげの作品に再会し、些かウームと唸った記憶があります。 これは手塚マンガ、劇画漫画、コメディ漫画とも一線を画する、実存主義漫画と云うべきか、否、感性に訴えかけてくるこの瑞々しさは凄いと思ったことがありました。 因みにつげ義春の「ガロ」の珠玉の作品群に「ねじ式」「紅い花」「チーコ」「ゲンセンカン主人」などがありました。 (2024年05月01日 21時57分24秒)
貸本漫画はリアルタイムでは知りませんでしたが床屋に行くとけっこう貸本漫画はおいてあって、それで読んだ記憶があります。雑誌連載の漫画は冊子になったものもありますが、貸本漫画は散逸しているのでしょうね。
「ガロ」は年長者向けの漫画雑誌で覚えています。 つげ義春は評論家は絶賛する寡作な作家なのですが、ガロに掲載されていたものはそんなに面白くなかったなあという記憶です。なにか事件が起きそうで結局何も起きないという話だったかと思います。 鬼太郎は連載の当初はちょっと怖い漫画でしたが、テレビ化され、ずっとのちには小学生向けの雑誌にも連載されるようになると、可愛らしく怖くなくなっていったようです。子泣き爺と当時の副総理が親戚と言う設定には笑えましたけど。 (2024年05月02日 09時03分02秒)
>つげ義春は評論家は絶賛する寡作な作家なのですが、ガロに掲載されていたものはそんなに面白くなかったなあという記憶です。なにか事件が起きそうで結局何も起きないという話だったかと思います。
つげ義春は寡作でもなく、それほど絶賛はされていないでしょう。 漫画にしても小説にしても映画にしても、好みは人それぞれで一向にかまわない事です。 事件についても起きても起きなくてもよいでしょう。 只私は評論家が取り上げる前に、好きというよりも何か心に引っかかり、以降忘れ難い青春時代の記憶に残る漫画家となりました。 >「ガロ」は年長者向けの漫画雑誌で覚えています。 「ガロ」は私が大学2年の時友人数名とで共同購入し、順番に回し読みを10巻程(1年弱)したことがありました。「ガロ」での当時のつげ義春は無名に近く、ガロの作品で話題の中心は専ら白土三平の「カムイ伝」でした。 当時大学はストで年間半分以上は構内封鎖されていたものです。 (2024年05月02日 12時13分19秒)
・曙光さんへ
「ガロ」は自分で買ったことはなかったのですが、友人の家とかなんかでけっこう読んでいました。カムイ伝は残酷強烈な描写が多く、それ以外の漫画は商業的にどうかなあという同人誌的なものが多かったような気がします。記憶違いでなければ、少年誌の連載のなかった頃の鬼太郎も連載されていて、猫娘のデビューは「ガロ」だったかなと思います。そのほか、印象的なのは「六の宮姫子の憂鬱」?ですが、この漫画がメジャーになることはないだろうなと思ったのを覚えています。 (2024年05月02日 13時50分19秒)
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