会津キリシタン研究所

【会津の十字墓】

　小生はこうした石祠をすべて、「十字墓」として分類しています。この十字墓は以前にもご紹介したことがありますが、キリシタンのものであるという伝承が残っています。ある方が、その伝承が記されているものを見せて下さいました。そして、最初にこの墓地を訪ねた時に、村の方にお伺いしたら、この十字墓がある墓域の家はどこかへ越してしまって、それがどこなのかは判らないとおっしゃっていました。

　会津では、よく出会うケースです。あるお寺に「子安観音」像があるのですが、それはある一軒のお宅にあったもので、そのお宅はどこかへ引っ越してしまって判らないと村の方がおっしゃっていたことがありましたし、別の村の墓地にある「子安観音」石仏に関しても、同じようなことをその村の方がおっしゃっていました。

　そして、この村に関するキリシタン伝承が残っています。それを直接、聞かれた方からお話をお伺いすることが出来ました。ですから、チャンスがあったら、この村とその周辺をじっくり歩いてみたいと思っています。今年の年賀状にプリントした写真に写っている「子安観音」石仏は、この村からそれほど離れていない村にあります。そして、あの「子安観音」石仏が祀られている祠は、長崎の枯松神社によく似ています。

　会津では、こうしたキリシタン伝承が残っているモノさえ、こうして現在も残っています。そして、中にはお線香の燃え残りが残っているものさえあります。お香は仏教だけのものではありません。ローマカトリック教会では、特別なおミサの時には今でも炊かれていますし、そもそも、お香を焚くことは新約聖書の中にも記されています。御復活の朝、マグダラのマリアたちが、キリストが葬られた墓へ持っていった乳香は、常温では無臭です。炭の上に置いて燃やすことで、初めて香りと煙が出てきます。この部屋の押入れのどこかに、乳香から抽出したエッセンシャル・オイルが残っているはずです。