会津キリシタン研究所

【木曽谷の不思議な地蔵菩薩群】

　木曽谷のとあるお寺の境内で撮った写真です。上の地蔵菩薩像は「厄除延命地蔵尊」と書かれた扁額が掲げられている祠に祀られています。下の写真は、その近くに集められている地蔵菩薩石像ですが、ほとんどの石像が一度破壊されています。小生が「首無し地蔵」と呼んでいる、首が落とされている石像がかなりありますが、そのほとんどは本来の首と思われるものが接着されています。

　これだけであれば、不思議なことはないのですが、このお寺は浄土宗のお寺です。ですから、首無し地蔵の多くはこの近隣でご住職が集められて、ここに並べたのであろうと思われます。明治期になって、明治政府は宗門人別制度を破棄しました。そして、宗門人別帳は戸籍になり、当該市町村の役場が管理し始めました。ですから、その事務手続きは、宗門人別制度そのものが残ったのであろうと考えられます。

　会津では、明治から昭和前期までの年号が彫られた墓石が、ほとんど残っていません。これは、伊那谷でも感じたことですし、木曽谷のお寺の墓地でも同じことを感じさせられました。また、戦前に行われた葬儀の写真が、写真集に残っているのですが、葬儀のあと葬列が組まれて埋葬に向かう写真を見ると、正にそれが葬列であることが解ります。そしてこの習慣は、火葬になって殻も続いているようで、中通りを車で走っている時に出会ったことがあります。先頭をお寺のご住職が歩いていらっしゃいました。

　あの葬列は、キリシタンの習慣の名残であろうと小生は考えています。しばらく前の『黒田官兵衛』で、葬列の先頭を高山右近が歩いているシーンがありましたが、キリシタンの時代よりも前に、仏教寺院があのような習慣を保っていたとは考えられません。習慣は、意味よりも形式が伝わることが多いようです。葬列に並ぶ順序などの決まりごとは伝わるのですが、その歴史に関しては消えてしまいます。