会津キリシタン研究所

【旧高遠藩領内のとあるお寺にあった「子安観音」石像】

　これは前回ご紹介したお寺がある村の近くにある村に建てられているお寺の境内にあった「子安観音」石像です。この「子安観音」石像にも乳房が彫られていますが、このお寺は浄土宗のお寺ですから、観音菩薩石像があること自体、極めて不思議なことです。

　ここは旧高遠藩領内ですから、当然のこととして高遠石工がこれを彫ったのであろうと思われます。そして、京極高知が飯田城主だった時代に、高遠がキリシタンの拠点であったのですから、こうした像が彫られていても不思議ではありません。そして、乳房のある「子安観音」石像は、会津や旧高遠藩領内だけにあるわけではなく、ここでもご紹介しましたが、秩父にもあります。

　この「菩薩」に関しては、中村元・福永光司・田村芳郎・今野達編『岩波　仏教辞典』に少し詳しく記されていますので、関心のある方は是非ご一読下さい。仏教の宗旨の中で観音菩薩像が祀られていても不思議ではない宗旨は、平安仏教の天台宗・真言宗のお寺です。鎌倉仏教の浄土宗・浄土真宗（真宗と含む）・日蓮宗のお寺に祀られていたら、極めて不自然なことだと言うことが出来ます。

　ただ、最近は禅宗のお寺でも境内に観音菩薩像が祀られたところがありますが、観音菩薩信仰の興隆を願ってのことであろうと思われます。曹洞宗や臨済宗では、観音菩薩を祀ることは有り得ないはずだったのですが‥‥‥。また、亡母の通夜で、浄土真宗本願寺派のお寺のご住職が『般若心経』をお読みになっていらっしゃったのを憶えています。「色即是空　空即是色」という言葉を覚えています。