会津キリシタン研究所

【会津の「子安観音」石仏】

　これも前述までの「子安観音」像や無文字墓石がある村々と同じ一帯の村にある「子安観音」石仏です。この「子安観音」石仏に最初に出会ったのは１９９８年のことでした。その時に村の方とお話しできたのですが、あの頃にはまだ「観音講」が村のご婦人によって守られているとのことでした。会津では、観音講が消えてしまった村が少なくありません。高齢化が一番の理由だろうと思われますが、それだけが理由であったとも思えません。

　また、この一帯でキリシタンの痕跡が残っている村は、他にもありますし、非常に奇妙な石像が並べられているところもあります。こうしたことは、キリシタンがこの一帯に一斉に広まったことを意味していると考えられます。蒲生氏郷が会津の領主になったのは天正十八年（１５９０）です。この時代には宗門人別制度は影も形もありませんし、仏教寺院は葬式や法事を執り行っていません。

　会津に「天正」と彫られているのがかろうじて判る石塔が残っていますが、天正年間には墓石を建てる習慣はなかったであろうと思われます。因みに、墓地に関しては「両墓制」というのがありますが、会津でその痕跡に出会ったことはありません。多くの墓地は、村の中に建てられているお寺の境内に造られていますが、山の中にある村で、お堂の周りではなく、数軒ずつ山の斜面に墓地を造っているところもあります。ただし、その村の中に建てられている観音堂も、小生が「キリシタン方位角」と呼んでいる方向を向けて建てられています。

　そして、これほどまでにキリシタンの痕跡が残っているのは、会津に限ったことではありません。都心のお寺の墓地に転切支丹類族墓石が残っているところをここでご紹介したことがありますし、群馬県でも栃木県でも、はっきりとしたキリシタンの痕跡が残っているところがあります。群馬県では、ある国道沿いの村々に不思議なモノが点在していました。