会津キリシタン研究所

【旧高遠藩領内のとある曹洞宗寺にある不思議な石仏】

　この２体の石仏は旧高遠藩領内のとある曹洞宗のお寺の境内にありましたが、どう見ても、２体とも観音菩薩が２体彫られているように見えます。上の写真の石仏は、おそらく馬頭観世音が２体彫られているのであろうと思われます。曹洞宗の中心的教理は「只管打坐」です。つまり、ただひたすら禅を組んで悟りを得ることです。ですから観音菩薩を祀って、それに願い事をするということがあったとは考えられません。

　にもかかわらず、曹洞宗のお寺の境内にこうした石仏があるということは、極めて不思議なものであると言わざるを得ません。旧高遠藩領内では、臨済宗のお寺だけでなく、曹洞宗のお寺のすぐ近くに三十三観音が祀られているところがあります。そのお寺を訪ねた時はかなり疲れていたのですが、それでも三十三観音のすべてを見てきました。もしかすると、明治以降にどこかからか観音菩薩石仏を集めてきて並べたのかもしれないと思えるほど、作風などが異なっている観音菩薩石仏が多かったです。

　しかし、その三十三観音をお寺が集めたのか、檀家の村が集めたのかは判りません。ただ気になるのは、その三十三観音の多くが破壊されているということです。あるいは、かなり風化が進んでいるものもあります。旧高遠藩領内では、田圃の畦に観音菩薩石仏を祀る習慣があった村がありますから、それと同じことが行われていて、近年になって圃場整備の時に集められたのかもしれません。

　こうしたことは実に不思議なことですが、会津でも境内に観音堂がある臨済宗のお寺や曹洞宗のお寺があります。そして、あるお寺の副住職からお伺いしたのですが、「蒲生氏郷の時代には、会津のほとんどのお寺は無住だった」とのことです。修行中に書かれた論文に記すためにお調べになられたそうです。