会津の不思議なお寺
【会津の不思議なお寺】 これは会津にあるとあるお寺で撮った写真です。このお寺は曹洞宗のお寺なのですが、境内に観音堂と薬師堂が建てられています。この写真を撮ったのは2012年11月16日でしたが、薬師堂の中にある厨子の扉が開いていたので、入口の格子の部分から薬師如来像を撮ることが出来ましたが、この薬師堂も小生が「キリシタン方位角」と呼んでいる方向を向いています。 そして、墓地にはかなりの数の古い墓石が残っているのですが、それらの多くは転切支丹類族墓石です。そして、下段の2枚の右側の写真は左側の墓石の側面を撮った写真です。「明治十五年」と彫られています。こうした不思議な墓石が数多く残っているのですが、この墓地には戒名が彫られている部分が切削されている墓石は、ほとんど残っていません。また、実に不思議なことなのですが、観音堂のことは『新編会津風土記』に記載されているのですが、薬師堂は記載がありません。 『新編会津風土記』は寛文四年に、保科正之公の命によって行われた寺社改めに時に提出された文書がそのまま記載されていると、『新編会津風土記』の凡例に記されていますから、寛文四年の寺社改めに時にはこの薬師堂はまだ建てられていなかったのかもしれません。だとすると、宗門人別制度が施行されてから、曹洞宗のお寺の境内にキリシタン方位角を向けた薬師堂が建てられたことになります。 こうしたことは、会津では十分に有り得ただろうと小生は考えています。会津だけでなく、日本の多くのところでは、葬儀の仕方は村毎に少しずつ異なっていますし、それに関する習慣も異なっています。宗門人別制度でお寺に命じられたことは、死者に戒名・法名を付けること、葬式で読経すること、そして、祥月命日だけでなくお彼岸やお盆に檀家がお布施をしているかどうかを正確に記録することです。曹洞宗のお寺で、座禅会が行われることがありますが、こうした習慣は少なくとも明治以降に始まったことであろうと考えられます。