執念深い私
昨日の夜、宿題をしていると、しょうやんはチラチラとこちらを見ては、何か言いたげな顔をしている。でもまだ宿題の途中なので知らんぷりを演じていると「ねぇねぇ♪いいこと教えてあげようか♪」とついに話しかけるしょうやん。集中力がなさすぎである。宿題をいつも長~い時間かけてやるのだ。宿題が早く終わったらボードゲームしてあげると言うと、猛ダッシュであっという間にやってしまうのに…。ニンジンをぶら下げないと走らない馬のようだ。「宿題が終わったら、聞いてあげるから、まずは最後まで集中してやりなさい」としかめっ面で言うのだが、「でも、絶対お母さんの好きな話題だよ♪」言いたくて言いたくて仕方が無い様子だ。それに私の好きな話題?何だ?何だ?今度は私が気になるのだ。1秒でも早く話したい息子、1秒でも早くききたい母親。でもここは大人らしく?ぐっと私が我慢して?何とか宿題を終わらせた。「この間さぁ、新しいクラスに変わって、お母さんが言ったでしょ♪好みのタイプの女の子いる?って♪ あの時はいなかったんだけどさ~」ここでもったいぶるしょうやん。さては好きな子でもできたかな!「好きな子できたんだぁ~♪」ニヤツク私。「誰だと思う♪」とニンマリ&照れ照れしょうやん。誰だと思うと聞かれても、クラス替えしたばかりで顔も名前も一致しないさ。だけど君はバレバレ男なのだ。最近、よ~く聞く女の子の名前があったなぁ…。「□ ○奈ちゃん♪」どうだという顔をしてしょうやんを見ると「何でわかる!! 会ったこともないくせに、何でか?」心底驚いた様子だ。「お母さんは何でもしっているのさ♪」と不適な笑みをすると「油断も隙もあったもんじゃない、恐ろしすぎだぞ!」とむくれている。そんな息子を無視するかのように「『□ ○奈ちゃん』って漢字でどう書くの?」すぐに問題を出す私。しょうやんは、ニコニコ顔で私の挑発にのり、何でも帳をとり出して鉛筆を持つ。宿題もこれくらい張り切ってやればすぐに終わるだろうに…。ところが最初の名字から躓いていた。あれ?あれ?どうだったっけ?うろたえている。私は出題するときに、連絡網で確認し、正解を知っていた。そしてヒントを与えることにした。「名字の一文字は□△空港の□だよ。読み方は違うけど。」というとすぐに正解の文字をなんでも帳に書くことができた。次は名前だ。最初の一文字は習ったばかりの字だったらしくすんなりと書くのだが、最後の「奈」の字が思い出せないのだ。「奈」の字は漢字辞典で調べてみようということで、漢字辞典でさっそく「な」のページを開くのだが「奈」という字が載っていないのである。他の2冊の辞書にも「奈」という字が出てこない。「奈」のつく熟語?固有名詞しか思い出せない。「神奈川」「奈良」「奈良漬け」。子供の国語辞典でようやく「奈良時代」という言葉から「奈」の字を見つけることが出来たのだが。「奈」の字は小学校で習う漢字だとずっと思っていただけに、「奈」の字が安易に見つからなかったことに驚いてしまった。しょうやんは、逆に「奈」が辞書に乗っていないことを喜んでいた。あまりに私が真剣に探すのでその姿が滑稽だったようだ。とりあえず、奈良時代の「奈」という漢字を何でも帳に書き写し、大好きな女の子の名前が完成して満足のしょうやん翌朝、まだ「奈」の字が辞書に載っていないことに違和感を感じた私は、再び辞書を開くのだ。すると…あった!のだ。「奈」の字が。それも意外なところに…。それは漢字辞典の1年で習う漢字の画数索引の次のページに、ひらがなのもとになったかん字とかたかなのもとになったかん字が記載されているところに。「奈」はカタカナの「ナ」の原型だったのだ。ひらがなやカタカナ1字だけでは意味を持たせることが出来ないから、辞書には載っていないのだ。と、納得したような、まだ納得いかないような、結局スッキリしていないのだが、とりあえず、「奈」を見つけることができたので、今日のところはこれで良しということにしよう。