カテゴリ:多系統萎縮症
2020年6月25日(木) たぶんお昼前、夫が逝ってしまった。
その20日前の6月5日(金)午後、救急搬送され入院していた。 5月中旬頃から、何となく変だなぁという感じはしていたけれど、 どこがどう変なのか、具体的な症状はなかった。 その後、5月下旬、尿の流出が悪くなり、血液検査の結果、 炎症反応が上がっているとのことで、抗生剤が処方された。 その抗生剤の効果が思わしくなく、気管狭窄音がして、痰の量も増えた。 それは、「抗生剤の効かない耐性菌があるのかもしれない」とのこと。 だとすると、「在宅で治療をするのは難しいから病院へ行った方が良い」 との主治医の判断で、救急搬送された。 搬送された大学病院では、ありとあらゆる検査をしたらしい。 結果は、肺炎で、肺に水も溜まっているとのことだった。 ビックリもしたが、なるほどなぁとも、思った。 以前から、訪看さんに「左肺は、エア入り悪いですね」と言われていたし、 サチュレーションが、以前は98%あったけれど、 最近は96%になることが多かった。 だから、腑に落ちた感じがした。 「2週間程度、入院になります」という説明を受けた後、 二酸化炭素の値が高いことがわかって、呼吸器装着になった。 それから約2週間、ICUに入った。 それでも、6月19日(金)、ICUを出て一般病棟に移り、 呼吸器を外すことはできなかったが、往診医、訪看さん、ケアマネさん等、 病院に集まって頂き、6月24日(水)退院に向けてのカンファレンスが行われた。 話し合いの結果、7月1日(水)10時の退院が決まった。 そして、声紋閉鎖術をして、カニューレを入れていない期間が5年あり、 気管切開孔が少し狭くなっていたので、 カニューレの負担を軽くするために、退院前に、 耳鼻科医に「もう少し広げてもらいましょう」ということで、 手術の日程も決まった。 そのカンファレンスの翌日のことで、 私も驚いたが、夫に関わってくださった全ての人を驚かせた。 6月25日(木)12:09 病院の主治医から、 「心臓が止まりました」との連絡を受け、夫の兄と共に病院へ向かった。 その日の朝まで、安定して過ごしていたそうだが、 急に心臓の動きが悪くなり、 点滴等で可能な限り手を尽くして治療をしてくださり、 一時は持ち直し、また悪くなりを繰り返し、良くなったかなと思ったら、 突然、心臓が止まってしまったらしい。 入院してから、新型コロナウイルス感染症予防対策で、 ずっと面会ができなかった。 こんなに長く会わなかったのは、結婚して初めてのことだった。 カンファレンスの時、2週間半ぶりに会った夫は、スースー寝ていて、 声をかけても、肩をたたいても、起きなかった。 連絡を受けて、病院へ駆けつけた時の夫は、 前日 寝ていた時の顔と、また違った、それはそれは、いい顔をしていた。 今まで見たこともない、穏やかな顔。 夫の病気がわかって、在宅療養を始めた頃、 「1リットルの涙」というドラマが放映された。 そのドラマは、当時の病名は夫と同じ、 脊髄小脳変性症を患った少女が書いた著書のドラマ化で、 私は、夫には見せたくないと思っていたけれど、 夕方に再放送があり、私が仕事に行っている間の時間帯だったので、 夫は見たらしい。 そして、私に、こう質問した。 「どうなって、死んだの?」 私の答えは、 「どうなって死んだのじゃなくて、どう生きたかでしょ? 人はね、死ぬまで生きなきゃいけないんだよ」 そう言った覚えがある。 その私の言葉通り、夫は、見事に、死ぬまで生きた。 精一杯生きた。 だからこそ、あんなにいい顔ができたのだと思う。 病院から帰宅して、弔問に来てくださった誰もが、 「いい顔してるね」と、言ってくださった。 「何だかおかしい」「フラフラする」と夫が言い始めて、かれこれ18年。 初めて特定医療費受給者証の更新に行ったとき、 保健師さんだったか?、県の職員の方だったか?に、 「これからは、ご主人と二人三脚でね」と言われて、 嫌で嫌で仕方がなかった。 夫の病気を受け入れられない私がいたからだと思う。 「結んだ紐をほどきたい」と、何度思ったかしれない。 それでもほどかなかったのは、夫が真摯に病に立ち向かっていたから。 その姿を見て、私も腹をくくれたのだと思う。 さまざまな方々が、夫と私をサポートしてくださった。 そのサポートがあったればこそ、今日まで在宅療養ができた。 感謝してもしきれないくらい、ありがたい。 そして、夫にも感謝。 私をここまで成長させてくれたこと、少しは優しくなれたこと、 夫がいなければできなかった。 来年の春には、結婚25年の銀婚式を迎えるはずだった。 それはできなくなったけれど、夫は私の中で生きている。 これからも、二人三脚で、共に生きたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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