カテゴリ:OE 【英国】および 英国での思い出
即位の礼の影響だろうか? ーーー 復刻記事 ーーー なぜ、英国の皇太子は『プリンス・オブ・ウェールズ』と呼ばれるのか? ■ そもそも英国は、イングランド、スコットランド、ウェールズおよび北アイルランドの四ヶ国から構成されている、連合王国(United Kingdom)です。 正式名称はUnited Kingdom of Great Britain and Northern Ireland =グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国。 略して『英国』、『イギリス』または『ブリテン』。 イングランドは北欧系・ゲルマン民族のアングロ・サクソンですが、その他の国はケルト系民族の国です。 日本ではこのケルト系の三ヶ国の人々をも『イングリッシュ』と呼び勝ちですが、これは間違いです。 『イングリッシュ』は、あくまで、イングランド人だけです。 ■ 日本には『堺はすべての始まり』という言葉がありますが、これは種子島に伝わった鉄砲の大量生産地にもなった自由都市・堺の先進性を指した言葉です。 世界規模で言うと、英国が、ある種すべての始まりとも言える。 産業革命・蒸気機関車その他の科学・産業・工業面は当然ながら、スポーツでもサッカー、ラグビー、テニス、バトミントン、卓球、ゴルフ、クリケット、ゲートボールの元になったクロッケー、・・・数え出すときりがありません(本当はここでちょっと止まってしまった)。 だから、もともと四カ国で始めたサッカー、ラグビーが国際的になった時にそのまま四カ国の International Match 国際試合として残った 。 ラグビー・サッカーでのユニフォームの色・シンボルカラーは イングランド=白にバラの刺繍 スコットランド=紺 アイルランド=緑 ウェールズ=赤 ■ さて、英国のチャールズ皇太子は、『プリンス・オブ・ウェールズ』と呼ばれますね。 なぜでしょう? ウェールズは上に述べたように、四ヶ国から形成される連合王国の中の一つの国にすぎません。 連合王国の皇太子がウェールズのプリンスとは? なぜでしょう? 今日はこのことを書いてみます。 ■ 映画俳優で、絶世の美女(だった)エリザベス・テイラーと二度と結婚した英国の男優、リチャード・バートンはウェールズの出身です。 ウェールズの炭坑夫の息子です。 私は仕事でウェールズによく行ったし、秘書の一人がオックスフォード大学出身の才媛でしたが、ウェールズ人だった。 ウェールズは炭坑が中心産業だったんですが、もちろんさびれてしまって失業者だらけ、私のロンドン駐在時代は日本企業の工場誘致に必死でした。 『ウェールズの山』と言う映画がありましたが、英国は日本と違って高い山も険しい山も無くて、ウェールズの山とは、私に言わせれば若草山の大きいようなもの。 あそこではケルト語族のウェールズ語がまだ一部で現役。 英語を話しても訛りは強い。 その点、バートンはよく訛りを矯正して、シェークスピア俳優になったもんだ。 エリザベス・テイラーの伝記を読んで、その中で彼の私生活を知って、人間的には嫌いな男だけれど。 彼のお爺さんはなんとユダヤ系のポーランド人です。 だから、バートンというのは、本名ではなくて、多分芸名でしょう。 ウェールズ出身の有名人というと、 歌手のトム・ジョーンズ、それに映画俳優のアンソニー・ホプキンスがいます。 ■ 世界的に有名な『プリンス・オブ・ウェールズ』は皇太子だけではありません。 英国が世界に誇る巨大戦艦の艦名でもありました。 第二次世界大戦中、英国はシンガポールを基地とする強力な東洋艦隊を持っていました。 日本軍は石油欲しさにマレー侵攻作戦を進めましたが この日本の動きを阻止するために英国の東洋艦隊は主力2戦艦、プリンス・オブ・ウェールズ(Prince of Wales 以下 POFW と称す)とレパルス(Repulse)をマレー沖に急行させました。 この動きを察知した日本海軍サイゴン航空基地では攻撃機を発進させ、昭和16年12月10日、急襲した攻撃機の魚雷・爆弾の命中の結果 POFW レパルス両艦は沈没しました。 これがいわゆる「マレー沖海戦」です。 マレー沖海戦は世界戦史上、エポック・メーキングなものでした。 POFW は東洋艦隊の旗艦のみならず、英国が「不沈艦」と誇った世界最新鋭の戦艦。 その不沈艦がレパルス共々撃沈された驚き(チャーチルは最大のショックだと嘆いた)もさることながら、それが戦艦同士の砲撃戦ではなく、航空機の雷撃でなされたことでした。 それまでの海戦は巨大戦艦の巨砲でポンポン撃ち合うもので、「大艦巨砲主義」と呼ばれていました。 それがこの海戦以来、各国は「航空勢力主力」へと転換しました。 せっかくこんな歴史的な成果を世界に先駆けて上げた日本海軍は、その後航空主力への転換には成功せず逆に「大和」「武蔵」の超巨大2艦を建造して大艦巨砲主義を継続、大和級第3艦「信濃」建造中にようやく航空母艦に艦種変更しました。 その上、大和級は第6艦まで建造中・または計画されていました。 狩猟・遊牧では激しい状況変化に対応せねばならないが、日本人のような農耕生活では十年一日、同じような農作の繰り返しで変化はありません。 「農民体質日本人」の「方向転換・意志決定の遅さ」はDNAレベルのものでしょうかね? ■ 炭坑町を舞台にしたジョン・フォードの名作「わが谷は緑なりき」もウェールズが舞台でした。 「ブラス」も炭坑町ということなので、今日までてっきりウェールズと思っていたんですが、ヨークシャーでした。 「ウェールズの山」と言う映画がありました。 この山のモデルのガースの丘はウェールズの首都であるカーディフの近郊にあるが、実際のロケは中部ウェールズだったようです。 ガースの丘の頂上に登った人によれば、頂上に実際に人造の小さな丘があるそうです。 さて映画ではウェールズ人達がの丘を山にしようとしたのは「イングランドからウェールズに入る最初の丘だから誇らしい」としています。 しかし私は違う考えを持っていて この丘がウェールズ人達にとっては、「ウェールズが国境でイングランド相手に幾度と無く激しく戦った象徴的な古戦場」であったからこそ、単なる丘では不足で山に昇格させたのだと思います。 イングランド(アングロ・サクソン)に対するウェールズ(ケルト)の敵意が長らく尾を引いていました。 山岳戦についてはイングランドがウェールズをついに征服したときも、ウェールズの人々はスノードン山に立てこもり抵抗しました。 ウェールズは平野のイングランドに比較すれば山地が多く、人々は「山岳民族」とされていたようです。 しかし、日本人から見れば、山とは言いがたい高度で、我々から見れば「丘民族」とでも呼ぶところですが。 スコットランドをのぞいて英国の最高峰はウェールズにあるスノードン山です。 標高1085m。 この山には山頂にまで至る狭軌のアブト式登山鉄道があり一両客車の豆蒸気機関車が走っています。 私も乗りましたが、走ると言うより「あえぎながら登っている」のです。 この蒸気機関車はいわゆるSLマニアの垂涎の的です。この蒸気機関車、約一時間で山頂まで登りましたが、私たちの眼下にはハイキング登山者が登山道を登っており約2・3時間で山頂に至るそうです。 英国最高峰といえど、その程度の高さです。 ■ ウェールズはチューダー王朝のエドワード一世にに征服され、イングランドから過酷な統治を受けましたから、他のケルト人達、アイリッシュ・スコティッシュ同様、イングランドには強い反感を持っています。 その反感をなだめようとイングランドは歴代の英国皇太子を Prince of Wales と呼ぶ事にしています。 なんかウェールズを馬鹿にしているようですが、エドワード一世は身重の妻をウェールズで出産させて(エドワード二世)その子に Prince of Wales の称号を与え、つじつまを合わせています。 この時 「A Prince of Wales who could speak no English ! 」と補足したそうですが、赤ん坊ならいくらイングリッシュの血筋でもまだ英語がしゃべれるわけがありません。 しかし、またどうしたことか?ウェールズ人もこれを歓迎したと言います。 実際には歓迎と言うより妥協・迎合でしょうか? Prince of Wales これが英国皇太子の正式名称です。 Crown Prince だけでは、ただ単に「皇太子」という意味です。 それに Prince of England なる名称は存在しません。 もっとも Prince の語義を研究社新英和大辞典でひいてみると『 4. 帝王を上にいだかない小国の統治者。公』。 KINGとまでは行かないようです 日本ではモナコの王様と言われるモナコ公ですが、正式呼称は 『The Prince of Monaco』 だそうです。 意外にも『公』どまりで、『王様 King』 じゃ無いんですね。 また研究社新英和大辞典ですが 『5. ((古)) 王(King) 帝(Emperor) 君主(Sovereign)』。 このあたりも該当ですね。 それまでのウェールズの首長が『Prince of Wales』と呼ばれていたのは、つまり『ウェールズ王』だった訳です。 「Wales」 とは、一時英国を占領していたシーザーのローマ軍団が「よそもの」と呼んだことに由来するとのこと。 どっちがよそものでしょうか? それともアングロ・サクソンと区別してそう呼んだんでしょうか? もう逝去したマーガレット王女の離婚したカメラマンの前夫は「スノードン卿」という爵位をもらっています。 もちろん一代呼称でしょうが、このへんもウェールズに気を遣っている感じですね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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